骨折
Bone Fracture 対象: 犬・猫 分類: 整形 最終更新: 2026-08-06
食事との関係
特になし(食事が直接の原因・治療対象となる疾患ではない。適正な体重管理という観点では適正給餌が有用)
家で気づけるサイン
- 足をまったく地面につけない、けがをした足を上げたままにする(ひどく足を引きずる状態)
- 患部が腫れる・触ると強く痛がる
- 脚の向きや形がおかしい・不自然に動く
- 皮膚に傷があり出血している・骨が見えている(開放骨折)
- 落下や事故のあと動きたがらない・呼吸が速く苦しそう(胸部外傷の合併)
受診の目安
緊急(当日〜夜間救急)— 足を全くつけない・脚が変形している・開放創がある・強く痛がる場合は時間帯を問わず受診。交通事故や高所落下のあとは外見に異常がなくても受診する
年齢の傾向
全年齢(外傷性のためどの年齢でも起こる)。猫の落下事故は若齢に集中し、119例では59.6%が1歳未満、1125例では平均2.3歳と報告される
なりやすいとされる犬種・猫種
- 特定品種の強い好発なし(主因は交通事故・落下・けんか等の外傷/MSD・ACVS)
- 猫は高所からの落下(ハイライズ症候群)による四肢骨折が多い(生活環境要因・PMID 15363762)
- 小型・トイ犬種は前肢(橈尺骨)遠位の骨折で癒合遅延・癒合不全・再骨折が起こりやすいと報告(治りにくさの特徴であり折れやすさの証明ではない・PMID 42511041)
詳しい解説
骨折(Bone Fracture)
交通事故・高所からの落下・転倒・他の動物とのけんかなどの外傷で骨が折れる状態。MSD Veterinary Manual は骨折の原因として交通事故・銃創・けんか・落下を挙げ、徴候には必ず足を引きずること・痛み・腫れが含まれるとしている。ACVS(米国獣医外科学会)も、犬猫が骨を折る原因として交通外傷・他の動物とのけんか・運動時の外傷などを挙げる。
皮膚に創がなく骨折部が外界とつながっていない「閉鎖骨折」と、創を通じて外界と交通する「開放骨折」に分けられる(MSD・ACVS)。また若齢では骨が全周は折れず曲がる程度にとどまる「不全骨折」が多いとされる(ACVS)。
保険の請求・手術で上位に入る頻出疾患だが、「様子を見る」余地のある病気ではない。受傷が疑われた時点で受診の対象になる。
好発の背景(品種より年齢・生活環境)
- 特定品種の強い好発は知られていない。 主因は外傷であり、どの犬種・猫種でも起こる。決めるのは品種ではなく「何が起きたか」と「どんな環境にいるか」。
- 猫は高所からの落下(ハイライズ症候群)が代表的。119例の後ろ向き研究では59.6%が1歳未満、平均落下高は4階相当で、46.2%が四肢を骨折し、脛骨(36.4%)・大腿骨(23.6%)の順に多かった(Vnuk 2004・PMID 15363762)。1125例の後ろ向き研究でも平均年齢2.3歳と若齢が中心で、夏(77%)・夜間(62.1%)に集中し、74.2%が硬い地面に着地していた(Candela Andrade 2025・PMID 40448315)。つまりリスクは「若く活動的で、窓やベランダに出られる環境」に集まる。
- 小型・トイ犬種の前肢(橈尺骨)遠位の骨折は「治りにくい」ことが知られる。癒合遅延・癒合不全・再骨折の率が高いと報告されている(Blanco 2026・PMID 42511041)。これは折れやすさの証明ではないが、小型犬が前肢をかばうときに軽く見ないほうがよい理由になる。
飼い主が気づける徴候
- 足を全くつけない・患肢を上げたままにする(ACVSは「重度の跛行がみられ、多くは患肢を上げたままにする」と記載)
- 患部が腫れる、触ると強く痛がる(MSDは足を引きずること・痛み・腫れを挙げる)
- 脚の向き・形がおかしい、不自然な方向に動く
- 皮膚に創があり出血している・骨が見えている(開放骨折)
- 落下や事故のあと動きたがらない、呼吸が速く苦しそう(落下例の33.6%に胸部外傷、20%に気胸、13.4%に肺挫傷 — Vnuk 2004。骨折以外の外傷が隠れていることがある)
受診目安・予防
- 足を全くつけない・脚が変形している・開放創がある・強く痛がる場合は、時間帯を問わず救急対応のできる病院へ(症状トリアージの「歩様異常」も同区分)。
- 交通事故・高所からの落下のあとは、外見に異常がなくても受診する。 胸部など体幹の外傷を伴っていることがあるため(Vnuk 2004)。
- 運ぶときは動かさないことが最優先。 ACVSは受診までの間、極めて狭い範囲に閉じ込め排泄以外は動かさないこと、できるだけ早く受診すること(少なくとも電話で指示を受けること)を勧めている。自分で骨を戻そうとしない・無理に添え木を当てない・人用の痛み止めを与えない(→ 応急処置・中毒対応)。
- 予防(猫): 窓・ベランダに柵やネットを設置する。Candela Andrade 2025 は飼い主教育と窓の柵を予防策として挙げ、事故が夏と夜間に集中することを示している。網戸だけでは落下は防げない。
- 予防(犬): リード管理による交通事故の回避、抱っこやソファからの飛び降り防止、滑る床の対策など、生活環境側の配慮が中心。
- 治るまで時間がかかることを前提にする。 ACVSは通常の活動へ戻り始められるまでの目安を子犬で最低4週間・成犬/高齢犬で8週間としており、痛みが引くと本人は治癒前から脚を使いたがる。指示された安静を守ることが再受傷の防止になる。
- 診断(MSDはX線またはCTが骨折パターンの把握に有用としている)と対応の選択は担当獣医師の診察に基づく。本ページでは扱わない。
費用の目安
骨折にかかるお金は、症状の重さ・通う回数・住んでいる地域・その病院の料金設定で変わります。 ここに出すのは見積もりではなく、公表されている調査から拾った幅です。 自分の家の場合にいくらになるかは、かかりつけの病院で聞くのが確実です。
動物病院の料金表から(項目ごと)
| 項目 | 金額 | この検査・処置を行っていない病院 | もとの表 |
|---|---|---|---|
| 外副子固定(ギプス等)犬猫共通 | 4,000円 | 12.5% | p.42(PDF p.47) |
| 大腿骨骨折整復術犬猫共通 | 62,500円 | 40.6% | p.58(PDF p.63) |
「この検査・処置を行っていない病院」の欄は、そう答えた病院の割合です。数字が大きい項目は、 かかりつけでは対応しておらず、紹介先の病院に移ることがあります。
出典: 日本獣医師会 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査 調査結果(令和5年9月)
いつのデータか: 2021年8月から10月にかけて動物病院に行ったアンケートで、そのときの料金設定です
読むときの注意: 回答した病院の自己申告です。獣医師の団体が料金の基準を決めることは法律で禁じられているため、全国共通の定価はありません。回答した病院の96.3%はふだんの診察を担う病院なので、紹介先の専門病院の料金とはずれることがあります
この数字の読み方
金額はどれも過去の調査をまとめたもので、いまの料金や、目の前の子にかかる額とは違います。 税込みか税別かも調査によって扱いが違います。
病院ごとに料金は自由に決められるため、同じ処置でも差が出ます。 気になるときは、受診の前に電話で聞いても構いません。金額を先に確認するのは失礼なことではありません。
獣医師に相談するための質問リスト
そのまま診察に持って行けるように整理しました。答えは診察でしか決まりません。
- いま与えているフードは、骨折と診断された今の状態に合っていますか?
- 食事の内容や与え方について、いま変えたほうがよい点はありますか?(種類・量・回数・水分の取り方)
- おやつやトッピングは続けてよいですか?避けたほうがよいものはありますか?
- 家で見ておくべきサインはどれですか?(気づいた変化: 足をまったく地面につけない、けがをした足を上げたままにする(ひどく足を引きずる状態)/患部が腫れる・触ると強く痛がる など)
- 次の受診や再検査はいつ頃がよいですか?その間に悪化を示すサインはどれですか?
- 今後の健診や定期検査で、確認しておくとよい項目はありますか?
- 食事以外に、家でできる工夫(環境・運動・体重)はありますか?
出典(5件)
- 業界標準確認日 2026-08-06
Bone Fractures in Dogs and Cats
骨折は交通事故・銃創・けんか・落下で多く生じる。徴候には必ず跛行・痛み・腫れが含まれる。外界と交通する創の有無で開放骨折/閉鎖骨折に分類。骨折パターンの把握にX線またはCTが有用
- 業界標準確認日 2026-08-06
Fractured Limbs
原因は交通外傷・他の動物とのけんか・運動時の外傷等。不全骨折(骨が曲がる程度で全周は折れない)は若齢に多い。重度の跛行がみられ多くは患肢を上げたままにする。受診までは極めて狭い範囲に閉じ込め排泄以外は動かさず、できるだけ早く受診する(少なくとも電話で指示を受ける)。通常の活動へ戻り始めるには子犬で最低4週間・成犬/高齢犬で8週間を要し、本人は治癒前から使いたがる
- 査読論文確認日 2026-08-06
Vnuk D ほか, 2004, 後ろ向き症例集積(119例), Journal…
猫のハイライズ症候群119例。59.6%が1歳未満、平均落下高は4階相当、96.5%が生存。46.2%が四肢骨折で脛骨36.4%・大腿骨23.6%。胸部外傷33.6%・気胸20%・肺挫傷13.4%。7階以上からの落下はより重篤な外傷と胸部外傷の高い発生率に関連
- 査読論文確認日 2026-08-06
Candela Andrade M ほか, 2025, 後ろ向き研究(1125例…
ベルリンの猫ハイライズ症候群1125例。平均年齢2.3歳、夏に77%・夜間に62.1%が集中、74.2%が硬い地面に着地。結論として飼い主教育・窓の柵の使用・速やかな受診を予防策として挙げる
- 査読論文確認日 2026-08-06
ミニチュア・トイ犬種の橈尺骨遠位骨折は癒合遅延・癒合不全・再骨折の率が高いことと関連する
冒頭で「ミニチュア・トイ犬種の橈尺骨遠位骨折は癒合遅延・癒合不全・再骨折の率が高いことと関連する」と記載。本KBではこの背景記述のみを引用し、治療法(固定法)の内容は扱わない
このページは受診の判断を支える一般情報であり、診断や個別の助言ではありません。 症状や食事の方針は、かかりつけの獣医師の診察に基づいて決めてください。