犬猫小町INUNEKO KOMACHI
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犬・猫の目が見えない・耳が聞こえない

家でできることと、受診の目安

# 犬・猫の目が見えない・耳が聞こえない 呼んでも来ない。テーブルの脚にぶつかる。寝ているところに触れると跳び起きる。歳のせいだと思っていたことの中に、その日のうちに診てもらったほうがよいものが混じっていることがあります。見分け方と、家の中でできることを順に書きます。 ## 先に、見分けたいこと 環境省のパンフレット「共に生きる 高齢ペットとシルバー世代」は、犬・猫の老化のサインとして、顔まわりの項目に「**目が白く濁ってくる。**」「**耳が遠くなる。**」を挙げています。見えにくさと聞こえにくさは、老化の代表的なサインとして知られているということです。 だからこそ、この2つは「歳だから」で止まりやすい変化でもあります。実際には、急いだほうがよいものが混じります。 ### 時間をおかずに動いてほしいとき 次のいずれかに当てはまるときは、時間をおかずに動いてください。ここだけは急ぎます。 | いま起きていること | 目安 | 理由 |

|---|---|---| | 急に見えなくなった。数日のうちに、ぶつかる・階段の前で止まる・瞳孔が開いたままになった | 時間帯を問わず受診(夜間・休日は事前に電話) | 急な視力の低下は、目の中の濁りだけでなく、網膜の機能や視神経の経路にも原因がありえます。網膜剥離では、見つかった時点で速やかに対応することが網膜の変性を抑え、視力の回復につながりうるとされています | | 白目が強く充血している。黒目が青白くくもる。目をしょぼしょぼさせる、目のまわりを触られるのを嫌がる | 救急 | 急に眼圧が上がる緑内障は「眼科の救急」とされ、まぶたのけいれん・白目の充血・角膜のむくみ・瞳孔の散大・見えていないことが徴候として挙げられています | | 高齢の猫が、急に見えていない様子になった | 時間帯を問わず受診 | 高齢の猫では、眼内の出血や網膜剥離を伴う急な視力低下が全身の高血圧に続いて起こることがあり、その背景に慢性の腎臓病や甲状腺の病気があることが多いとされています | | 黒目の中に血がにじんで見える | 時間帯を問わず受診 | 眼の中の出血は上と同じ経路で起こることがあり、眼の中の炎症(ぶどう膜炎)も眼科の救急として扱われる項目に挙げられています | | 片目だけ様子が違う(濁り方・開き方・充血)。瞳孔の大きさが左右で違う | その日のうちに | 瞳孔の左右差の原因は、加齢による虹彩の萎縮から、眼の中の炎症・角膜の痛みを伴う状態・神経の経路の異常まで幅が広く、家庭で見分けられるものではありません | | 耳を強く痛がる。急に腫れた。出血や強い悪臭がある。顔が傾く、ふらつく | その日のうちに | 聞こえにくさの背景に、痛みを伴う耳の変化や、奥(中耳・内耳)への波及が起きていることがあります | | 頭をしきりに振る。耳を掻く。耳のにおいや分泌物が増えた | 早めに受診 | 耳ダニやアレルギーなど、原因の切り分けが必要とされています | 目については、様子を見る枠を設けていません。 見え方の急な変化は、はっきりするまで待つと間に合わないことがあるためです。判断に迷うときは、電話で相談して構いません。当サイトの受診目安の整理でも、迷ったら受診・電話相談を原則としています。 そして、シニアの子や持病のある子は変化が速いことがあるため、上の目安より早めに動いてください。 ### 「白い目」は、白内障とは限りません 高齢の犬猫の目が白っぽく見えたとき、思い浮かぶのは白内障だと思います。ただ、見た目が似ていて別物の変化があります。 MSD獣医マニュアルは、飼い主向けの解説でこう書いています。「白内障は、若い犬にみられるわずかな水晶体の欠点や、高齢の動物で起こる、水晶体中心部の組織が厚く硬くなるという正常な変化と混同されるべきではない」。この「正常な変化」は核硬化と呼ばれるもので、専門家向けの記述では、核硬化が中心部の円形の灰色の領域として、初期の白内障が周辺部の小さな泡状の混濁として、並べて図示されています。当サイトの疾患整理では、核硬化は視力の低下を伴わないことが多いとまとめています。 つまり、白く見えることと、見えていないことは、同じではありません。そして、どちらなのかをこの記事で決めることはできません。 区別には眼科的な評価が必要で、診断は獣医師の仕事です(獣医師法第17条は、獣医師でなければ犬猫等の診療を業務としてはならないと定めています)。 ここでお伝えできるのは、「白いけど歳のせいだろう」で終わりにせず、一度は診てもらってほしい、ということだけです。進行した白内障は続発性のぶどう膜炎や緑内障を招くことがあるとされており、経過を把握しておくことに意味があります。なお、治療にどれだけ費用がかかるかは、このコーナーではなく 病気と食事の各ページ が扱います。 ### ゆっくり進んでいる場合 数か月から数年かけて、痛がる様子もないまま見えにくくなっていく形もあります。進行性網膜萎縮という病気では、暗いところでの見えにくさ(夜盲)から始まることが知られています。夕方の散歩や薄暗い部屋でだけぶつかる、目が青緑色に強く光って見える、瞳孔が開き気味になる、といった変化が挙げられています。犬種によっては、発症する前に遺伝子検査で調べられる場合があります。 耳のほうも、ゆっくり進むと気づきにくいものです。MSD獣医マニュアルは、部分的な難聴や片耳だけの難聴は見つけにくく、注意深い観察や電子的な検査が必要になることが多いと記しています。「呼んでも来ない」が、聞こえていないせいなのか、聞こえたうえで来ないのかは、家庭では思いのほか判別できません。 ### 「見えていない」のか、「わからなくなっている」のか もうひとつ、家庭で切り分けにくい重なりがあります。 10歳以上の犬の飼い主を対象とした日本の質問紙調査(ウェブ調査の有効回答726件)では、視覚の障害・嗅覚の障害・振戦・ふらつきや転倒・頭が下がることが、認知機能不全と有意に関連していたと報告されています(Ozawa M ほか, 2019, 横断的質問紙調査, J Vet Med Sci 81(12):1829-1834, PMID 31685716)。AAHAの2023年のシニアケア指針も、この報告を引いて、これらが早期の認知機能不全に気づく手がかりになりうると述べています。 同じ「部屋の隅で立ち止まる」「呼びかけへの反応が鈍い」が、見えていないことからも、聞こえていないことからも、認知機能の変化からも起こりえます。しかも認知機能不全の診断は、痛みや内分泌の病気、そして感覚器の衰えを除いたうえで行う除外診断とされています。順番として、まず目と耳を診てもらうことに意味がある、ということです。夜鳴きや徘徊が重なっている場合は、夜鳴き・徘徊・昼夜逆転 もあわせてご覧ください。 ### 受診の前に、記録しておくと早いこと いつからか。片側か両側か。明るいところと暗いところで違いがあるか。ぶつかるのは決まった場所か。呼びかけには、正面からなら反応するか、背後からだとどうか。大きな音と小さな音で違うか。 そして、家の中を歩いているところを10秒ほど動画に撮っておくと、診察が早くなります。診察室は慣れない場所なので、普段の歩き方とは変わってしまいます。AAHAの2023年の指針も、動物病院がシニアの飼い主に案内できることの一つとして、家で見られる動きや気になる行動を写した写真・動画を撮ってきてもらうことを挙げています。 なお、シニアに入ってからの健診の間隔については、シニア期と介護のハブ にまとめています。 ## 家でできること 見えない子・聞こえない子にとって、家は記憶の地図です。ですので、最初にすることは何かを買うことではなく、変えないことです。 ### 家具の配置を変えない 米国獣医眼科専門医学会(ACVO)は、視力を失った犬と猫への助言の筆頭に、こう書いています。「模様替えをしないでください。ほとんどの犬と猫は、自分のいる環境の地図のようなものを頭の中につくります。」「できれば家具を同じ場所に置いておくと、慣れるのを助けます。」 あわせて、「食事と寝床のある『ホームベース』を、安全で見つけやすい場所に置いておく」ことも挙げられています。水と食器と寝床の位置は、決めたら動かさない。ここが土台になります。 環境省のパンフレットは、高齢の犬猫の部屋づくりとして「いつでも飲めるように新鮮な水を何か所かに置く」ことをすすめています。数を増やすのは構いません。増やしたあとに動かさない、と考えてください。 実際にぶつかるのは、家具そのものよりも、床に置きっぱなしの荷物や、引いたままの椅子であることが多いものです。片付けを完璧にする必要はありません。よく通る線の上だけ、通り道を空けておく。それで足ります。 そして、模様替えを一生あきらめてください、という意味ではありません。 動かす必要が出てきたら、動かしたあとに一緒にゆっくり歩いて、新しい形を覚え直す時間をとってください。地図は書き換えられます。時間がかかるだけです。 ### 落ちる場所と、行き止まりを先にふさぐ AAHAの2023年のシニアケア指針には、獣医療者に向けて、こう記されています。「シニアの犬と猫は視覚や聴覚が限られていることがあるため、階段やプールのような、家と庭の中にある危険を洗い出すことを、飼い主とのシニアケアの相談に含めるべきである。」つまり、診察の場で相談してよい話題だということでもあります。 ACVOも同じ趣旨で、「目の見えない動物を、水辺(プール・湖・池など)や崖・急な落差のそばで、目を離したままにしてはいけません」としています。 環境省のパンフレットは、部屋づくりの安全対策として「階段や台所は柵で入れなくしたり、高いキャットタワーは低くするなどして事故を防ぐ」と記しています。日本の住まいに置き換えると、階段・ベランダ・玄関の上がりかまち・浴室あたりが同じ役割の場所になります。 ここは「気をつける」だけでは守りにくい場所です。気をつけるのではなく、行けなくする。 柵を置く、扉を閉める習慣にする。家族全員が同じように閉められる形にしておくほうが確実です。 猫の場合は、上下運動そのものを禁じるのではなく、一段の高さを下げるという考え方が使えます。降りるときが危ないので、途中に台をひとつ足して二段階にする。行き先を奪わずに、落差だけ小さくします。 ぶつかりやすい場所は、たいてい家の中の決まった数か所です。全部を保護しようとせず、実際にぶつかっている角だけを和らげるほうが続きます。 ### においと、足裏の感触で目印をつくる ACVOは、目の見えない犬と猫が頭の中の地図をつくるのを助ける方法として、音の出るおもちゃで聴覚を使うこと、家の中の場所やおもちゃににおいを足すこと、そしてカーペットとタイルのような感触の違いを使うことを挙げています。 足裏の感触は、床を滑りにくくする工夫とそのまま両立します。環境省のパンフレットは床材について「マットなどを敷き、滑りにくい床に。爪が引っかかるような絨毯はやめる」と記しています。滑り止めを敷くついでに、トイレの前・水の前・寝床の前だけ、質感の違うものにしておく。 それが「ここが水の場所」という目印になります。 ただし、正直に書いておきたいことがあります。環境省のパンフレットは、高齢期には「嗅覚も衰えてくる」とも記しています。においの目印が思ったほど効かない子もいます。効かなかったとしても、やり方が悪かったわけではありません。 そのときは足裏の感触のほうに寄せてください。 ### 明るさを足す AAHAの2023年の指針は、家庭のストレスを下げる工夫の一つとして**ナイトライト(足元灯)**を挙げています。 視力がほとんど残っていない場合には届きませんが、まだ見えている部分がある段階では、助けになることがあります。前述のとおり、暗いところから先に見えにくくなる病気があります。夜のトイレまでの道と、寝床から水までの道に、小さな灯りを置いてみてください。 ### 触る前に、声をかける ACVOは、「静かな声で、あるいは普段どおりの声で、近づいていることを知らせると、安心につながります」と記しています。 見えていない子にとって、突然の接触は文字どおり不意打ちです。抱き上げるとき、体を拭くとき、リードをつけるとき。先に声をかけて、それから触る。順番を変えるだけです。 MSD獣医マニュアルは、視力が落ちてきた犬について「動きが慎重になり、普段より飼い主のそばを離れなくなることがある」と記しています。急にくっついて離れなくなったのは、甘えが増えたのではなく、そうしないと位置がわからないからかもしれません。 ## 聞こえない子への合図 耳の聞こえにくい子と暮らすときは、声の代わりに何を使うか、を決めることになります。 ### まず、驚かせないこと MSD獣医マニュアルは、耳の聞こえない犬について「より驚きやすく、それが咬みつきのリスクを高めることがあり、また車などの危険から守られにくくなる」と記しています。 驚いて咬んだとしても、それは性格が変わったからとは限りません。気配がわからないまま急に触られたときの反応として説明できることがあります。咬みつきが繰り返される場合は、家庭で対処を探すより、かかりつけの獣医師や動物の行動をみる専門家に相談してください。 人が怪我をする前に、という意味でもあります。 コーネル大学猫健康センターは、耳の聞こえない猫について、知らせずに背後から近づかないことを助言しています。VCA(獣医行動学専門医らが監修する飼い主向け解説)も、犬について「耳の聞こえない犬は驚きやすいことがあります。首輪やリードに手を伸ばす前に、あなたの手が犬に見えていることを確かめてください。思いがけず撫でられるだけでも犬は驚き、トレーニングを怖がるようになることがあります」としています。 寝ているところを急に触らない。 これは、この記事でいちばんお伝えしたいことの一つです。当サイトが確認した資料にも、難聴のある子は「眠っているときに近づいても気づかず、触れると過剰に驚く」ことが徴候として挙げられています。起こす必要があるときは、次の項に挙げるコーネル大学の「床を踏み鳴らして振動で知らせる」方法を応用して、先に気配を届けてください。目が開いてから、手を見せて、それから触る、という順番です。 ### 振動・光・においで呼ぶ コーネル大学猫健康センターは、具体的にこう書いています。「手を強く叩くか、床を踏み鳴らしてください。その振動で、猫はあなたが近くにいることに気づきます。」あわせて、声の合図をハンドサインに置き換えることや、照明のスイッチを点けたり消したりすることも挙げています。 犬でも同じ考え方が使えます。VCAは、聴覚に問題のない犬でも、声の指示より手の合図のほうが確実に反応することが多いと記しています。つまりハンドサインは特別な訓練ではなく、多くの家庭がすでに半分使っているものです。「おいで」のときにいつもしている手の動きを、そのまま合図として決めてしまえば足ります。 においを使う方法もあります。おやつを手に持って、風上に立ってみる。ただし、前述のとおり高齢期には嗅覚も衰えてくるとされているので、反応がないことをもって「聞こえている/聞こえていない」を家庭で判定することはできません。どの感覚がどれだけ残っているかの評価は、動物病院の仕事です。 合図は、家族全員で同じものを使ってください。 人によって違うと覚え直しになります。決めたら紙に書いて貼っておくと揃いやすくなります。 先天性の難聴について当サイトが確認した資料には、難聴があっても、視覚(ハンドサイン)・振動・触覚での合図と、背後から驚かせない配慮があれば十分に暮らせるとされる、と記されています。加齢で聞こえにくくなった子にも、この考え方はそのまま使えます。MSD獣医マニュアルも、耳が聞こえないこと自体が痛みを伴うわけではないと記しています。 ### 振動で知らせる首輪について そういう道具があることは知られています。ただ、当サイトは、その使い方の良し悪しを判断できる一次資料を持っていません。 ですので、すすめることも止めることもしません。 使うことを考える場合は、電気ショックを与える種類の首輪とは別のものであることを確認したうえで、かかりつけの獣医師や、動物の行動をみる専門家に相談してから始めてください。合図として使うつもりの道具が、その子にとって嫌なものになってしまうと、やり直しが難しくなります。 ## 散歩と外出の続け方 見えないこと・聞こえないことが、そのまま外出をやめる理由になるとは限りません。 環境省のパンフレットも、高齢期のケアとして「適度な運動も忘れずに」と記しています。 そのうえで、守りだけを厚くします。 リードを外さない。 環境省のパンフレットは「屋外に犬を連れて行くときは、リードをつけましょう」と記しています。ACVOは「慣れない場所ではリードをつけておくと安全です」とし、VCAは犬について「柵のない開けた場所で、耳の聞こえない犬をリードから放してはいけません。驚いたり気を取られたりして、危険なほうへ走り出すのはたやすいことです」としています。呼び戻しは効かない前提で組み立ててください。 迷子への備えを先にしておく。 同じパンフレットは「身元を示す迷子札やマイクロチップを入れましょう」と記しています。呼んでも戻ってこられない子ほど、ここが効きます。 コースを変えない。 家の中と同じで、外にも記憶の地図があります。同じ道を、同じ順に。新しい道を試すのは、余裕のある日だけにしてください。 時間帯を見直す。 暗いところから先に見えにくくなる病気があります。夜の散歩を朝や夕方に移すだけで、歩きやすさが変わることがあります。 猫は室内で。 コーネル大学猫健康センターは、耳の聞こえない猫について、外の音に気づけなくなっている以上、危険から遠ざけるために室内に限ることを助言しています。 歩ける距離が短くなった日は、それでも構いません。抱っこやカートで外に出るだけでも、外の空気とにおいは届きます。その日の体調や家族の余裕によって、外に出ない日があっても構いません。 ## 道具を使うなら このサイトでは商品名を挙げていません。体格も、進み方も、家の形もその子ごとに違うためです(→ 編集方針と出典の扱い)。代わりに、選ぶときに見るところだけを書きます。 そして、この症状に関しては、買うものはあまり多くありません。 配置を変えないこと、危ない場所をふさぐこと、触る前に知らせること。効くことの大半にお金はかかりません。 柵・ゲート。高さよりも、家族が毎回きちんと閉められるかを見てください。開け閉めが面倒なものは、いつか開けっぱなしになります。 敷物。滑り止めと感触の目印を兼ねられます。環境省のパンフレットが記すとおり、爪が引っかかるような毛足の長いものは避けます。 部分敷きなら、汚れた一枚だけ替えられるタイル状のものが扱いやすいことがあります。継ぎ目が浮くとつまずくので、置き方は確認してください。 灯り。まぶしいものではなく、足元を照らすもの。夜に人が通る道と重なる位置に置くと、家族の側も助かります。 迷子札・マイクロチップ。前述のとおりです。 おもちゃ。ACVOが挙げているのは、目の見えない子について、音の出るおもちゃで聴覚を使うこと、おもちゃや場所ににおいを足すことです。耳の聞こえない子のおもちゃについては同じ資料に記述がないため、当サイトからは「残っている感覚のほうに遊びを寄せる」という考え方までをお伝えします。遊びをやめる必要はありません。入口を変えるだけです。 目のまわりを物理的に守る器具のような、判断に専門的な評価が要るものについては、当サイトは推奨の可否を判断できる一次資料を持っていません。 気になる場合は、かかりつけで相談してください。 ## 外の手を借りるとき 眼科を詳しくみられる病院に紹介してもらう、という選択肢があります。 MSD獣医マニュアルは、網膜が正常に見えるのに見えていない症例について眼科医への紹介がすすめられるとし、急性の緑内障については獣医眼科医への速やかな紹介がしばしば有用だと記しています。まずはかかりつけに、対応しているか、していなければ紹介してもらえるかを聞くのが早道です。 聞こえているかどうかは、電子的な検査で調べられることがあります。 MSD獣医マニュアルは、先天性の難聴が多い犬種の子犬について、電子的な検査が聴力の評価に役立つと記しています。高齢になってからの聞こえにくさをどこまで調べるかは、その子の状態と目的によって変わるため、かかりつけと相談してください。 家での見守りが続かなくなったときには、外の手があります。 往診に対応する動物病院のほか、介護のサービスとしては、自宅を訪問して介助を行う訪問介護、日中だけ預かるデイケア、介護に対応するペットホテル、最期まで預かる老犬・老猫ホームといった業態があります。それぞれ費用の考え方も、契約前に確認しておきたいことも違うため、詳しくは 介護する側が限界に近いとき にまとめています。 目の見えない子は家の中の地図を頼りに動いています。ACVOが「模様替えをしない」を助言の筆頭に置いているとおりで、環境が変わることの負担は小さくないと考えられます。それでも、預けるという選択が間違いになるわけではありません。 家で見続けることだけが正解ではない、というのは、当サイトが介護と終末期の資料を通して一貫して置いている立場です。 環境省のパンフレットは、犬と猫の介護についてこう書いています。「一人で抱え込まず、家族と協力したり、かかりつけの動物病院に相談し、無理なく続けられる方法で向き合いましょう」。 ## 最後に ACVOは、視力を失った犬と猫についての解説を、こんな一文で締めています。「ほとんどの犬と猫は、視力のない生活に驚くほどよく順応します。失明は、動物よりも飼い主にとってのほうがつらいことが多いのです。」 この後半を、「だから気に病まなくていい」という意味には受け取らないでいただきたいと思います。この一文は、飼い主の側のつらさが軽いという話ではなく、むしろそちらのほうが重くなりやすいと書いています。先に順応するのはその子のほうで、家族が追いつくのに時間がかかる。 そういう順番になることがある、と読むほうが近いかもしれません。 呼んでも来ないのは、無視ではありません。ぶつかるのは、不注意ではありません。触ったときに跳び起きたのも、あなたを警戒したからとは限りません。関係が壊れたわけではなく、届き方が変わったのだと考えることができます。 そして、届け方はまだ残っています。振動、光、におい、手の合図、床の感触、そして触る前の一声。使える経路は、思っているよりたくさんあります。 今日、全部をやる必要はありません。廊下の荷物をひとつどける。水の器の場所を決めて、もう動かさない。今日はそれだけでも構いません。 疲れたら休んでください。休むことは、甘えではありません。 --- この記事について: 家の中の工夫に関する記述は、環境省パンフレット「共に生きる 高齢ペットとシルバー世代」の「犬・猫の老化のサイン」「高齢犬・高齢猫の過ごしやすい部屋づくり」「高齢ペットのケア」および介護の項と、米国獣医眼科専門医学会(ACVO)「Tips on Adjusting to Your Pet's Blindness」(2021)、AAHA『2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats』(Dhaliwal R ほか, 2023, 学会ガイドライン, J Am Anim Hosp Assoc 59(1):1-21, PMID 36584321)にもとづいています。耳の聞こえない子への合図に関する記述は、コーネル大学猫健康センター「Deafness」およびVCA Animal Hospitals「Teaching and Training a Deaf Dog」(Ellen Lindell VMD DACVB ほか監修)によります。受診の目安、白内障と核硬化の違い、急な視力低下、急性緑内障、瞳孔の左右差、高齢猫の全身性高血圧に伴う眼の変化については、MSD/Merck Veterinary Manual の該当項および当サイトの疾患整理にもとづく一般的な目安であり、診断ではありません。認知機能不全との関連は Ozawa M ほか, 2019, 横断的質問紙調査, J Vet Med Sci 81(12):1829-1834, PMID 31685716 によります。治療法・薬・投与量については扱っていません。 個々の判断は必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。病気ごとの治療費は 病気と食事の各ページ に、介護サービスの業態と費用は 介護する側が限界に近いとき にまとめています。→ 編集方針と出典の扱い

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