犬・猫のシニア期と介護
年をとった犬と猫に、家でできることと、受診の目安をまとめています。
(2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines・当サイト訳) 区切りは、家族が気にかけはじめるきっかけであって、その日を境に何かが変わるものではありません。 体格による差は、環境省のパンフレットが人間の年齢に換算した表で示しています。 | その子の年齢 | 大型犬 | 小・中型犬、猫 | |---|---|---| | 6歳 | 47歳 | 40歳 | | 8歳 | 61歳 | 48歳 | | 10歳 | 75歳 | 56歳 | | 12歳 | 89歳 | 64歳 | | 15歳 | 110歳 | 76歳 | | 17歳 | 124歳 | 84歳 | 出典:環境省パンフレット「共に生きる 高齢ペットとシルバー世代」。原典の表には「品種や飼育環境等によって違ってきます」という注記があります。原典は6歳から17歳まで1歳刻みで載せており、当サイトで6・8・10・12・15・17歳の行を抜き出しました。 同じ10歳でも、大型犬と小型犬では立っている場所が違います。「うちはまだ若いから」も「もう歳だから」も、体格を抜きにして決めてしまうのは早いかもしれません。 ### シニアに入ると、健診の間隔が変わります 節目を過ぎると、すすめられる受診の間隔そのものが変わります。 猫について、AAHA/AAFPの2021年の指針は、シニア猫(10歳超)は少なくとも6か月ごとに診てもらい、慢性の病気がある場合はさらに頻回に、と記しています。これまで年1回だった猫では、間隔が半分になるということです。 犬と猫に共通して、AAHAの2023年のシニアケア指針は、シニアの犬と猫には年に1〜2回の医学的な検査がすすめられるとし、その中身として血球計算・血液生化学・尿検査などが含まれうるとしています。 何か起きてから連れて行くのではなく、何もないうちに一度診てもらう、という組み替えになります。すぐに切り替えられなくても構いません。次の受診のときに、間隔について相談してみるだけでも違います。 ## 老化か、病気か。この見分けは難しい このコーナーが最初に伝えたいのは、ここです。 環境省のパンフレットは「犬・猫の老化のサイン」として、次を挙げています。 > 行動:反応が鈍くなる。運動量が減る。トイレをうまく使えなくなる。段差でつまずく。高いところに飛び上がれなくなる。寝ている時間が長くなる。 顔まわり:目が白く濁ってくる。耳が遠くなる。 体:毛づやが衰える。抜け毛が増える。白髪が目立ってくる。足腰が細くなる。 (環境省「共に生きる 高齢ペットとシルバー世代」) 読んでいて気づかれたかもしれません。この一覧は、病気を疑うときに挙がる症状とほとんど重なります。 トイレを失敗するのは老化のサインでもあり、排尿の異常のサインでもあります。寝ている時間が長いのは老化でもあり、痛みや心臓の変化でもありえます。段差でつまずくのは、後ろ足の衰えでも、神経の病気でもありえます。 AAHAの2023年のシニアケア指針は、この点を正面から扱っています。指針の冒頭は、獣医療者は「加齢は病気ではない」と教えられるが、飼い主の側には、高齢の犬猫の心身の衰えは加齢によるやむを得ないものだという受け止めがありうる、と述べています。そのうえで本文には、次のように書かれています。 > 獣医療チームは、加齢に伴う変化を単に「老化」として片づけないよう、飼い主に積極的に説明するべきである。「老化」は包括的な言い回しであり、シニアの犬や猫に起きている、特定の、そしてしばしば対処可能な状態を十分に言い表せない。 (2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats・当サイト訳) これは、老化だと思っていた家族を責める話ではありません。 見分けが難しいのは、症状が本当に重なっているからです。だからこのコーナーでは、どの記事も「これは老化か、病気か」から始めます。家でできる工夫より先に、受診の目安を置きます。順番を逆にすると、手当てが遅れることがあるからです。 なお、次のような状態は、老化かどうかを考えるより先に連絡が必要とされているものです。 呼吸が苦しそう(特に猫が口を開けて呼吸している)・強い痛みのサインがある・立てない・急に後ろ足が動かなくなった・尿が出ていない・発作が起きている、または繰り返す・意識がはっきりしない・猫が食べない状態が続いている。 (MSD獣医マニュアルの救急の項と、当サイトの受診目安の考え方にもとづきます。猫については、食欲が落ちた状態が続くことが、肝リピドーシスという命に関わりうる肝臓の病気の背景になることが知られています。) この一覧がすべてではありません。MSDの救急の項は、救急対応は動物病院への電話から始まることが多いと記しています。上に挙げていない変化でも、いつもと違うと感じたなら、電話で相談して構いません。 夜間や休日に対応する動物病院は お住まいの地域の獣医師会や自治体の救急案内 から探せます。 ## 一人で抱えないこと 介護は、その家の中で静かに始まって、外から見えないまま続くことがあります。 環境省のパンフレットは、介護についてこう書いています。 > 犬と猫の介護は飼い主にとって重要な問題です。一人で抱え込まず、家族と協力したり、かかりつけの動物病院に相談し、無理なく続けられる方法で向き合いましょう。 (環境省「共に生きる 高齢ペットとシルバー世代」) 「無理なく続けられる方法で」 と書かれていることに、目を留めていただければと思います。理想の介護をやり切りましょう、とは書かれていません。 AAHAの2023年の指針にも、介護する側についての項があります。「介護者の負担への対応」という見出しのもとで、シニアの犬と猫の世話には時間・忍耐・お金、そして精神的な、しばしば肉体的な体力が要ること、それが介護する人に精神的・身体的な負担をかけ、介護者の負担(caregiver burden)につながりうることが書かれています。動物ではなく人の状態として、学会のガイドラインが項目を立てているということです。もし疲れを感じているなら、それは記録されている現象でもあります。 同じ項では、動物病院の側が飼い主を支える具体策として、一時預かりや休息のための預け先の一覧を渡すことなどが挙げられています。疲れの相談先に、かかりつけを含めてよいということでもあります。 外の手を借りることについては、環境省のパンフレットにも記述があります。ただしこれは、飼い主自身が入院するなどして世話を続けられなくなる場合に備える、という文脈で書かれたものです。 > 事前に探して、試しに短期間で利用してみましょう。長期間預けたいときは、早めに相談しましょう。 (ペットホテル・ペットシッターについての記述) 同じパンフレットは、かかりつけの動物病院についても「一時的な預かりができる場合もあります」と記しています。 想定されている場面は違いますが、預け先を先に知っておくという考え方は、介護が長引いたときにも同じように働きます。余力のあるうちのほうが選びやすいのは確かです。ただ、すでに限界に近いところでこれを読んでいる方もいると思います。その場合でも遅すぎるということはありません。いまの状態のまま相談して構いません。 預け先や訪問の支援にどんな種類があるか、選ぶときに何を確認するかは、介護する側が限界に近いとき で扱います。 ## このコーナーが扱わないこと 境界をはっきりさせておきます。ここに書いていないことは、書き忘れではなく、別の場所が受け持っています。 | 扱わないこと | どこが受け持つか | |---|---| | 治療の中身・薬の名前や量 | 獣医師の領分です。このコーナーは受診の目安までにとどめます(診療は獣医師でなければ業務として行えません。獣医師法第17条) | | 病気ごとの費用 | 病気と食事の各ページ が持っています。出典・調査時点・データの偏りを明記した数値を置いています | | 預け先や訪問介護の料金・相場 | 扱いません。事業者ごとに体系が違い、含まれる範囲も変わるため、契約前に各事業者へ直接ご確認ください。当サイトは選ぶときの確認事項までを 介護する側が限界に近いとき で扱います | | 看取りをどう決めるか、見送ったあと | /ending/ が持っています。葬儀・供養と、そのあとの気持ちの置き場所まで | | 特定の商品のおすすめ | しません。道具については「選ぶときに見る基準」だけを書きます | 用品について広告やアフィリエイトのリンクを置く場合は、広告である旨を明示します(景品表示法)。紹介する順番や書き方が、収益によって変わることはありません。 詳しくは 編集方針と出典の扱い をご覧ください。 --- この記事について:シニアの定義・区分・健診の間隔・介護者の負担についての記述は、AAHAおよびAAHA/AAFPの学会ガイドライン原文(2019年・2021年・2023年)を確認して書いています。老化のサイン、人間に換算した年齢の表、介護の心構えは環境省パンフレット「共に生きる 高齢ペットとシルバー世代」にもとづきます。緊急のサインはMSD獣医マニュアルの救急の項を参照しました。いずれも2026年8月時点で本文を確認しています。本コーナーは診療の指示ではありません。診断・治療は獣医師の診察に基づきます。→ 編集方針と出典の扱い