犬猫小町INUNEKO KOMACHI
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犬・猫の夜鳴き・徘徊・昼夜逆転

家でできることと、受診の目安

# 犬・猫の夜鳴き・徘徊・昼夜逆転 昼はよく寝ているのに、夜になると鳴く。同じところをぐるぐる歩く。呼んでも、こちらを見ていない。この記事は、いま夜中に読んでいる方もいると思って書いています。まず受診してほしい理由と、家の側でできることを順に並べます。 ## 先に、見分けたいこと 夜の落ち着かなさは、「歳のせい」や「認知症」という言葉でひとまとめにされやすい変化です。けれど、そこにたどり着く前に確かめておくものがあります。 この記事には、他の症状の記事にあるような「ここまでは様子を見てよい」という欄を置いていません。**夜の落ち着かなさは、原因を絞る作業を先にしたほうがよい変化だからです。** 早めにかかりつけへ連絡してください。 ### 時間をおかずに動いてほしいとき 次に当てはまるときは、夜が明けるのを待たずに動いてください。ここだけは急ぎます。 | いま起きていること | 目安 | 理由 |

|---|---|---| | けいれんしている。5分以上続く、短時間に繰り返す、意識が戻らない。初めての発作 | 救急 | 発作は、原因を問わず時間が結果を左右します | | 意識がはっきりしない。呼びかけへの反応が明らかにおかしい | 救急 | 夜間の落ち着かなさとは別に扱う変化です | | 呼吸が苦しそう。開口呼吸(特に猫)、舌や歯茎が青紫、お腹を使う呼吸 | 救急 | 呼吸の異常は様子を見る範囲に入りません | | おしっこが出ていない・出せない。何度も踏ん張るのに出ない | 救急 | 排尿できない状態は、それだけで緊急です | | 強く痛がっている。触ると鳴く、体を丸めて動かない | 救急(夜間・休日は事前に電話) | 強い痛みは、それ自体が救急にあたるものとして扱われています | | 急に目が見えていない様子がある。物にぶつかる、瞳孔が開いたまま | 時間帯を問わず、できるだけ早く受診(夜間・休日は事前に電話) | 急な視覚の喪失は、血圧などの背景を確かめる必要があります。治療をしても視覚が戻るのは一部にとどまるとされ、早いほうがよい変化です | | 昨日と今日で明らかに違う、という急な変化 | その日のうちに | ゆっくり進む変化と、急な変化とでは考え方が変わります | シニアの子や持病のある子は、変化が速く進むことがあります。迷ったときは、この表より早めに動いて構いません。 夜間や休日に対応している動物病院は お住まいの地域の獣医師会や自治体の救急案内 から探せます。電話で相談してよいか迷う、という段階でかけて構いません。 救急の対応は、動物病院への電話から始まることが多いとされています。 そして、痛がっている様子があっても、人用の痛み止めや、人用の睡眠薬・睡眠改善薬を与えないでください。 犬猫で中毒を起こすものがあり、診てもらうときの判断も難しくします。 ### 夜の落ち着かなさに、重なるもの 犬の認知機能不全については、国際的な専門家の作業部会が診断のガイドラインをまとめ、2025年末に公表しました(掲載は2026年の獣医学会誌)。そこでは、見当識・社会的なやりとり・睡眠の乱れ・トイレの失敗・学習と記憶・活動量の変化・不安という行動の領域(頭文字をとってDISHAAと呼ばれます)に変化が現れる、加齢に伴う進行性の神経の症候群として定義されています。夜鳴きや夜間の徘徊は、確かにこの中に含まれています。 ただし同じガイドラインは、診断の第一段階の要件として、身体・整形外科・神経の診察と検査によって別の原因を洗い出すこと、そして併存している病気に対処してもなお症状が残ることを挙げています。つまり「認知機能不全らしい」という見立ては、他を調べたあとに残るものです。 AAHAのシニアケアガイドライン(2023年)も、同じことを短く書いています。 > 認知機能不全は、除外診断でありうる。詳細な病歴、身体検査、神経学的検査、生化学的評価、尿検査は、これらの動物が似た症状を起こす別の病気を持っていないことを確かめるうえで不可欠である。

(2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats・当サイト訳) 同ガイドラインは、似た行動の変化を起こしうるものとして、頭蓋内の腫瘍・痛み・臓器の機能低下を挙げています。別のレビューはさらに広く、痛み、代謝の異常、臓器の不全、脳の腫瘍、内分泌の病気、消化器や皮膚の病気、感覚の衰えを挙げ、見当識の障害に見えるものが聴覚や視覚の異常に由来することがあると述べています。 具体的には、たとえばこういう重なり方をします。 痛みは、行動の変化として出ることがあります。AAHAのガイドラインは、認知機能不全に伴う不安について、慢性の痛みと結びついていることがあるとも記しています。痛みが夜だけ強くなると決まっているわけではありませんが、静かになった時間に気づく、ということはあります。 目や耳の衰えは、暗さと静けさの中で影響が大きくなります。環境省のガイドラインも、高齢になると視力・聴力・嗅覚が衰えると記しています。見えていない子にとって、電気を消した部屋は昼間の部屋とは別の場所です。 血圧も関係します。犬猫の高血圧についての学会コンセンサス(ACVIM 2018年)は、高血圧が眼と神経に障害を起こすことを整理しており、眼では滲出性網膜剥離をはじめとする病変が、神経では意識や行動の変化・見当識の障害・ふらつき・けいれんなどが報告されています。両眼の網膜剥離では、視覚が急に失われることがあります。 昨日までと様子が違う、という変化が夜に出たとき、背景にこれがあることがあります。同コンセンサスは、9歳以上の犬と猫について年1回の血圧スクリーニングを行うのは妥当だとしています。 内分泌の病気もあります。猫の甲状腺機能亢進症は7歳を超えた猫に多い病気で、MSDの獣医マニュアルは徴候として過度に鳴くこと・活動性が高すぎること・食欲があるのに痩せることなどを挙げています(時間帯を限定した記述ではありません)。AAHAのガイドラインは、シニアの犬と猫の基本の検査に甲状腺のパネルと尿検査を含めるとしています。血液検査で見えるものが混ざっている、ということです。 ### 診断と、そのあとの治療は獣医師の領分です この記事では、認知機能不全かどうかを判断することも、その治療について書くこともしません。 犬猫の診療は獣医師でなければ業務として行えないと定められており(獣医師法第17条)、認知機能不全に使われる薬や食事の扱いも、診察と検査のうえに組み立てられるものです。ここで扱うのは、受診の目安と、診断がどうであっても家の側でできることの2つだけです。病気ごとの治療費は 病気と食事の各ページ にまとめています。 なお犬では、8歳を超えた犬のおよそ14〜22.5%に加齢に伴う認知機能の低下がみられるとされています(AAHA 2023年)。同ガイドラインは、犬で最も多い症状として「日中に眠り、夜に落ち着かなくなること」を挙げ、猫については犬と似ているが、猫のほうが関わりを求めることと鳴くことが増える傾向があるとしています。夜中に鳴く猫を前にして「うちの子だけがおかしいのでは」と感じることがあるかもしれませんが、学会のガイドラインに書かれている程度には、よくある変化です。 ### 受診の前に、記録しておくと早いこと 何時ごろから始まって、どのくらい続くか。何かのきっかけがあるか(暗くする、家族が寝室に入る、物音)。日中の睡眠がどのくらい増えたか。あわせて、水を飲む量とおしっこの量、食欲、歩き方の変化も書き留めておくと、絞り込みが早くなります。 そして、夜の様子を短く動画に撮っておいてください。 昼間の診察室では再現されない変化です。歩き方、鳴き方、呼びかけへの反応。この3つが映っていると伝わりやすくなります。 犬の認知機能不全のガイドラインをまとめた作業部会は、7歳ごろから定期的に行動の変化を確認しはじめ、10歳からは半年ごとに評価尺度を使うことを推奨しています(ノースカロライナ州立大学の発表による)。次の健診のときに、行動の話も持ち出してよいということです。体の話だけで終わらせなくて構いません。シニア期の健診の間隔そのものについては シニア期と介護のハブ にまとめています。 ## 家でできること 原因を確かめる作業と並行して、家の側は今夜から変えられます。買い物は後回しで間に合います。 環境省のガイドラインは、高齢期の行動の変化について「症状によって必要な対策や介護も異なりますから、問題の原因を探りながらひとつずつ対処していくことになります」と書いています。全部を一度に変えなくてよい、という意味でもあります。 ### 昼と夜のメリハリを、家の側でつくる AAHAのガイドラインは、家庭でストレスを減らす工夫として、フェロモン製剤、室温の管理日光が入ること常夜灯、音を出す機械、そして来客にインターホンを鳴らさないよう頼む貼り紙を挙げています。効果の大きさを示す数字は示されていないので、「これをやれば夜が静かになる」という話ではありません。ただ、夜だけを何とかしようとせず、昼のほうから触っていくという発想は、ここから取れます。 日中は、日の当たる場所に寝床を置く。カーテンを開ける。抱っこでもカートでも、外の空気に当たる時間をつくる。歩けるなら短くても外に出る。環境省のパンフレットも高齢期のケアとして「適度な運動も忘れずに」と記しています。 日中の刺激については、AAHAのガイドラインが環境エンリッチメント(運動、新しいおもちゃ、頭を使う遊びや課題)に触れています。ただしこれは食事療法と組み合わせた文脈での記述で、何をどれだけ行えばよいという数値はありません。 その子が疲れない範囲で、というところまでしか言えません。 夕方以降は、逆に情報を減らします。テレビの音量を下げる、来客を夜に入れない、明るすぎる照明を落とす。環境省のパンフレットは、高齢期は「気温や生活環境の変化で体調を崩しやすくなる」とも記しています。夜の室温は、その日の体調で感じ方が変わります。 そして、これで直らなくても、やり方が悪かったということではありません。 生活リズムの乱れは、病気の側の変化として起きていることがあります。変わらなかったという事実そのものが、次の受診で伝える材料になります。 家の工夫を続けることで受診を先送りにしないでください。 ### 夜の家を、安全に歩ける形にする 歩き回るのを力ずくで止めるのは、現実には難しいことが多く、不安が強い状態で押さえ込むのは避けたいところです。歩けるようにしておくほうが現実的です。 見当識が落ちている子は、部屋の隅や家具の裏で立ち止まって動けなくなることがあります(認知機能不全の見当識の低下として知られる形のひとつです)。ですので、行き止まりを減らすのが第一です。家具と壁のあいだの隙間、ソファの裏、洗面台の下。入れてしまうと出られない幅の隙間は、クッションや箱でふさぎます。 円を描けるようにする、という考え方もあります。歩く子は、直線ではなく回れる形のほうが行き詰まりません。テーブルの周りを一周できるか、部屋の中央に回れる空間があるかを見てみてください。サークルやベビーゲートで区切る場合も、四角い箱ではなく、回れる形にできると違います。 ぶつかって痛い場所をなくします。 家具の角、扉の枠、金属の脚。緩衝材やタオルで覆います。AAHAのガイドラインは、シニアの犬と猫は視覚や聴覚が限られていることがあるため、家や庭の中の危険な場所(階段やプールなど)を洗い出すことをすすめています。 階段には近づけないようにします。 環境省のパンフレットも安全対策として「階段や台所は柵で入れなくしたり、高いキャットタワーは低くするなどして事故を防ぐ」と記しています。夜のあいだだけゲートを閉める、という運用でも構いません。猫では、高い場所へ上がること自体を止めるより、同じパンフレットが書いているように高さを下げていくほうが、行き先を奪わずに済みます。 床は滑らないようにします。 同パンフレットは床材について「マットなどを敷き、滑りにくい床に。爪が引っかかるような絨毯はやめる」と記しています。夜通し歩く子にとって、滑る床は体力の消耗そのものです。全部でなくてよいので、歩く線の上だけでも敷いてみてください。 寝床は、逃げ場として残しておきます。 環境省のパンフレットは、ケージについて「入り口以外をカバーなどで覆い、普段から休めるスペースとして開放しておく」、寝床について「やわらかい素材で、涼しい場所と暖かい場所に」と記しています。閉じ込める道具としてではなく、落ち着ける場所として普段から開けておくという順番が大事なところです。 ### 寝る前に、ひととおり済ませておく トイレの失敗は、認知機能不全の行動領域のひとつに数えられています(DISHAA)。夜に起きる理由が、実は排泄だった、ということがあります。 寝る前に一度外に出す、あるいはトイレへ誘導する。寝床の近くにもう一か所トイレを置く。環境省のパンフレットは、トイレについて「入り口を浅くして段差をなくしたり、スロープを付けるなど入りやすく。いつも清潔に」と記しています。夜に間に合わない理由が、またげないことだった場合もあります。排泄そのものについては 排泄が間に合わない で詳しく扱います。 注意してほしいのは、夜のおしっこを減らすために水を控えさせないことです。 環境省のパンフレットは「いつでも飲めるように新鮮な水を何か所かに置く」と記しています。水を多く飲むこと自体が、腎臓や内分泌の病気のサインであることもあります。飲水の量に手を入れる判断は、必ず獣医師と決めてください。 ### 鳴いたときに、どうするか ここは、はっきり書けることが少ない場所です。 「反応すると鳴きが増える」という考え方はあります。一方で、認知機能不全に伴う鳴きは学習の問題とは限りません。AAHAのガイドラインは、不安がこの状態の重要な要素であり、見逃されるべきではないと述べ、慢性の痛みと結びついた不安があることにも触れています。痛くて鳴いている子に反応しないのは、方針として成り立ちません。 ですので、「無視する」を家庭の原則として先に決めてしまうのは、おすすめしにくいところです。 逆に、駆けつけ方をその都度変えると、家族の側が消耗します。現実的なのは、受診して原因の見当をつけたうえで、その子について何を目指すのかを獣医師と決めておくことです。方針が決まっていれば、夜中に毎回判断しなくて済みます。 決めるまでのあいだにできることとして、声をかけるより先に、体に触れて場所を知らせるという順番があります。耳が遠くなっている子には、声は届いていないことがあります。突然触ると驚くので、まず床や寝床をとんとん叩いて振動を伝えてから、体に手を置く。目や耳の衰えについては 目が見えない・耳が聞こえない で扱います。 そして、叱ることで解決に向かう場面ではありません。 これは道徳の話ではなく、原因が学習や意図の側にあるとは限らないためです。夜中に声を荒げてしまったとしても、それで何かが決定的に壊れるわけでもありません。 ## 道具を使うなら この症状で必要になる道具は多くありません。買い足す前に、いま家にあるもので配置を変えるほうが早いことが多いです。 このサイトでは商品名を挙げていません。体格も、進み方も、家の間取りも違うためです(→ 編集方針と出典の扱い)。選ぶときに見るところだけを書きます。 常夜灯は、AAHAのガイドラインが家庭での工夫として挙げているもののひとつです。見るところは明るさと位置で、顔の高さに直接光が入らないこと、そして歩く線(寝床からトイレ、寝床から水)が見える位置にあることです。人が寝る場所の明るさと、その子が歩く場所の明るさは、分けて考えられます。 音を出す機械(ホワイトノイズなど)も同ガイドラインの一覧に入っています。ただし、耳が遠くなっている子には届きません。人の側の眠りを守るために使う、という位置づけのほうが現実に近いことがあります。 サークル・ベビーゲートは、閉じ込めるためではなく、階段や台所へ行かせないための仕切りとして考えます。見るところは、高さと、倒れないか、そして前述のとおり中で回れるかです。上から覆う形のものは、その子が普段から嫌がっていないかを先に確かめてください。 寝床は、やわらかさよりも、縁の高さで自力で出入りできるかを見てください。夜中に出られなくて鳴いていた、ということがあります。洗えるか、そして涼しい場所と暖かい場所の両方に置けるかも、環境省のパンフレットが挙げている点です。 環境省のガイドラインは、介護用品について「いろいろなものを試してみて、一番合ったものを使用しましょう」と書いています。最初に選んだものが合わなくても、選び方が悪かったわけではありません。 ## 家族の睡眠を、後回しにしない ここは、この記事でいちばん伝えたい部分です。 夜に眠れない状態が続くと、判断力も、体力も、気持ちの余裕も削られていくことがあります。これは意志の問題ではありません。 AAHAのシニアケアガイドラインには、介護する側についての項があります。シニアの犬と猫の世話には時間・忍耐・お金、そして精神的な、しばしば肉体的な体力が要ること、それが介護者に精神的・身体的な負担をかけ、介護者の負担(caregiver burden)につながりうることが書かれています。動物ではなく、人の状態として学会が項目を立てています。 そのうえで、同じ項に、次の一節があります。 > 飼い主とともに、その人の制約を認めたうえでその範囲内で機能する計画を立てることが、介護者の負担を抑えるうえで最善である。たとえば、犬が一晩じゅうハアハアして歩き回っているとき、歯石処置をすすめるのは──たとえそれが医学的に最も重要な治療対象であっても──最優先すべきこととは限らない。先に睡眠の乱れを和らげることで介護者のストレスが軽くなり、その後で他の医学的な問題に取り組めるようになるかもしれない。 (2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats・当サイト訳) 読み替えると、こうなります。家族が眠れていないことは、診察室で持ち出してよい話題です。 「夜眠れていません」は、愚痴ではなく診療上の情報として扱われうるものだ、と学会のガイドラインが書いているということです。 具体的にできることを、いくつか。 交代で休む。 同じ人が毎晩起き続ける形は、長くは保ちにくいものです。二人以上いるなら夜を半分に割る、平日と週末で担当を変える、どちらかが翌日休める日に長く担当する。同ガイドラインは、犬と猫の行動の変化をめぐる家庭内の対立や、パートナー・家族との意見の食い違いが介護者の負担を増やしうることにも触れています。分担を口に出して決めておくこと自体が、負担を減らす方向に働きます。 代われる人がいない場合も、同じことは考えられます。 一人で介護している家庭は珍しくありません。その場合、分担の相手は家族ではなく外になります。数時間だけ来てもらう、日中だけ預かってもらう、という形も「交代」に入ります。順序は後の節に書きました。 寝室を分けることも、選んでよい方法です。 これを「見捨てること」のように感じる方がいますが、そういう性質のものではありません。ただし、分けると不安が強くなる子もいます。同じ部屋の反対側に寝床を移す、扉を開けたまま隣室にする、といった段階もあります。環境省のガイドラインが書いているとおり、原因を探りながらひとつずつ試して決めていくところです。試して合わなければ戻せます。 一晩まるごと諦める日をつくる。 耳栓をして、危険なものだけ片づけて、朝まで起きない日を決める。ただしこれは、すでに受診を済ませていて、前掲の表にあるような急を要するサインが出ていない状態が前提です。 そのうえで安全が確保されているなら、選べる方法です。判断に迷うなら、次の受診のときに「この日はこうしたい」と先に相談しておくと決めやすくなります。 日中に寝る。 その子が昼に寝ているなら、こちらも寝られる時間です。家事より睡眠を先に置く日があってよいと思います。 そして、AAHAのガイドラインは、動物病院が飼い主を支える具体策として、一時預かりやレスパイト(休息)を頼める人の一覧を渡すこと、そしてメンタルヘルスの専門職・ソーシャルワーカー・カウンセラー・心理職につながる情報を渡すことを挙げています。疲れの相談先に、かかりつけと、人間の側の専門家の両方を含めてよいということです。 環境省のパンフレットも、介護についてこう書いています。「一人で抱え込まず、家族と協力したり、かかりつけの動物病院に相談し、無理なく続けられる方法で向き合いましょう」。理想の介護をやり切りましょう、とは書かれていません。 ## 集合住宅にお住まいの場合 夜鳴きは、家の中だけの問題にとどまらないことがあります。ここは事実として書きます。 環境省の「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」(2高齢ペットとシルバー世代年)は、住宅が密集した地域での飼育について述べる中で、こう記しています。 > 最近では高齢の犬や猫の遠吠え、夜鳴きなどで、周辺に迷惑をかけることも問題となってきています。最悪の場合、手放さざるを得ない状況になってしまうこともあるようです。 (環境省「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」) 行政の文書に一項目として書かれているということは、あなたの家だけで起きていることではないということでもあります。そのうえで、こじれる前に打てる手があります。 上下と左右の部屋の方に、先に伝えておく。 同ガイドラインは、集合住宅では上下・左右の居住者に飼育していることを必ず知らせるよう記しています。介護に入ったこと、夜に鳴くことがあること、対応していることを短く伝えておくと、受け取られ方が変わります。苦情が来てから説明するより、先に一言のほうが消耗しません。 音の出方を、部屋の側から見直す。 同ガイドラインは、近隣への配慮として防音対策にも触れています。寝床を隣家と接する壁から離す、窓際から離す、厚手のカーテンやラグを足す。夜だけ部屋を変える、という運用もあります。 管理規約を確認しておく。 同ガイドラインは規約の遵守を挙げています。介護のために設備を変える場合(共用部分にスロープを置くなど)は、先に管理組合に確認しておくほうが安全です。 鳴き声を減らすこと自体を目的にしない。 同ガイドラインは近隣に迷惑をかけないための対策にも触れていますが、これは原因への対処を飛ばしてよいという意味ではありません。声を出させないための道具や方法を自己判断で使うことは、この記事ではおすすめしません。 原因が痛みや不安の側にある可能性が残っているためです。 ## 外の手を借りるとき 家の中の工夫と家族の分担だけでは、支えきれなくなることがあります。そのときに外へ頼るのは、後退ではありません。 夜間の介護がいちばん重いのは、翌日が来ることです。日中に預かってもらえれば、その時間に眠れます。介護のサービスとしては、自宅を訪問して介助を行う訪問介護、日中だけ預かるデイケア、介護に対応するペットホテル、最期まで預かる老犬・老猫ホームといった業態があります。料金は事業者ごとに体系も含まれる範囲も違うため、当サイトでは相場を書きません。契約前に各事業者へ直接ご確認ください。 業態の違いと、選ぶときに確認することは 介護する側が限界に近いとき にまとめています。 通うことが難しくなってきたら、往診に対応する動物病院もあります。夜の様子は動画で伝えられますが、家の中を見てもらえると、導線の話が早く進むことがあります。 そして、まずかかりつけに「夜眠れていない」と言ってみるのが、いちばん近い一歩です。前述のとおり、それは診療上の情報として受け取られうるものです。 ## 最後に 夜中に何度も起きて、朝が来て、また一日が始まる。その繰り返しの中で、自分の気持ちが自分でもよく分からなくなることがあります。 この記事は、そこに名前をつけようとはしません。ただ、AAHAのガイドラインが「介護者の負担」という項目を立てて、時間・忍耐・お金・精神的な体力・肉体的な体力が要ると書き、家庭内の対立にまで触れているのは、それが個人の弱さの話ではないと整理されているからです。 夜鳴きが始まったからといって、その子との時間が終わったわけではありません。昼に日の当たる場所で一緒に寝ることはできますし、名前を呼ぶことも、体に触れることもできます。夜の何時間かが変わっただけで、他の時間まで全部が変わったわけではない、という見方も成り立ちます。 今夜、全部を整える必要はありません。 家具と壁の隙間をひとつふさぐ。歩く線に常夜灯をひとつ。今日はそれだけでも構いません。 そして、明日かかりつけに電話をかけてみてください。夜のことを話してよい場所です。 疲れたら休んでください。休むことは、甘えではありません。 --- この記事について: 認知機能不全の定義・行動領域(DISHAA)・診断で他の原因を洗い出すことは、犬の認知機能不全症候群ワーキンググループのガイドライン(Olby NJ ほか, 2025, 学会ガイドライン, J Am Vet Med Assoc 264(4):498-505, PMID 41442884)によります。スクリーニングの年齢(7歳・10歳)は同ガイドラインの発表元であるノースカロライナ州立大学の公式リリースの記述にもとづきます。除外診断であること、症状の内訳、家庭でのストレスを減らす工夫、介護者の負担については AAHA『2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats』(Dhaliwal R ほか, 2023, 学会ガイドライン, J Am Anim Hosp Assoc 59(1):1-21, PMID 36584321)によります。高血圧が眼と神経に起こす障害および9歳以上のスクリーニングは ACVIM のコンセンサスステートメント(Acierno MJ ほか, 2018, 学会コンセンサス, J Vet Intern Med 32(6):1803-1822, PMID 30353952)、猫の甲状腺機能亢進症の徴候は MSD獣医マニュアルによります。部屋づくり・介護の心構え・近隣への配慮は環境省パンフレット「共に生きる 高齢ペットとシルバー世代」および環境省「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」(平成22年2月)にもとづきます。緊急のサインは MSD獣医マニュアルの救急の項と、当サイトの症状トリアージにもとづく一般的な目安であり、診断ではありません。認知機能不全かどうかの判断、および治療法・薬・投与量については扱っていません。 個々の判断は必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。病気ごとの治療費は 病気と食事の各ページ に、介護サービスの業態と選ぶときの確認事項は 介護する側が限界に近いとき にまとめています。→ 編集方針と出典の扱い

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