犬猫小町(準備中)

犬猫は完全に肉食なの?

犬は雑食、猫は真性肉食動物。進化と栄養学から解説します。

約4分 最終更新: 2026-07-28

「犬はオオカミだから肉食」「猫は完全な肉食動物」。よく聞くこの話、科学的にはどうなのでしょうか? ## なぜこれが気になるの? ペットフード選びで「肉が多いほど良い」「穀物は不要」という意見をよく見かけます。でも、犬と猫では体の仕組みがかなり違います。正しく理解することが、最適なフード選びの第一歩です。 ## 犬: 実は「雑食動物」 ### オオカミとは違う遺伝子を持っている 2013年、スウェーデンの研究チーム(Axelsson ら、Nature 誌)が画期的な発見をしました。犬はオオカミに比べて AMY2B(アミラーゼ遺伝子)のコピー数が平均5倍 に増えていたのです。 AMY2B はデンプン(穀物やイモ類に含まれる炭水化物)を消化する酵素を作る遺伝子です。犬はオオカミから分かれる過程で、人間の農耕社会と共に暮らし、穀物を消化できるように進化したと考えられています。 ### 品種によって消化力が違う 2025年の最新研究(Katica ら、PLoS ONE)では、犬種によって AMY2B のコピー数が 7.7〜18.4 と大きく異なることが報告されています。つまり、デンプンの消化力には犬種差があるということです。 ### 犬に植物ベース食は可能? 2024年の研究(Linde ら、PLoS ONE)では、15頭の犬に植物ベースの総合栄養食を12か月間与えたところ、血液検査・栄養状態・心臓バイオマーカーに 臨床的な問題は見られなかった と報告されています。 ただし、サンプル数が15頭と少なく、長期(数年規模)の安全性データはまだ蓄積されていません。2023年の系統的レビュー(Dominguez-Oliva ら)でも「明確な健康被害の圧倒的証拠はないが、利益のエビデンスも限定的」と結論づけています。 ## 猫: 真の「肉食動物」 猫は犬とは根本的に異なります。猫が「真性肉食動物(obligate carnivore)」と呼ばれるのには、明確な科学的根拠があります。 ### 猫にしかない栄養上の制約 2023年の研究(Li & Wu、Journal of Animal Science and Biotechnology)では、犬と猫のアミノ酸代謝の違いが詳しく整理されています: 1. タウリン: 猫はタウリンを体内で十分に合成できません。不足すると拡張型心筋症や網膜変性を引き起こす可能性があり、動物性原料からの摂取が不可欠です

  1. アラキドン酸: 猫はリノール酸からアラキドン酸を合成する能力が非常に低く、動物性脂肪からの直接摂取が必要です
  2. ビタミンA: 猫はβ-カロテン(植物に含まれる)をビタミンAに変換する能力が限られています
  3. 高タンパク要求量: 猫は犬よりも多くのタンパク質を必要とします(AAFCO 基準で成猫26%以上、成犬18%以上) ### 猫に植物ベース食は危険? 上記の栄養上の制約から、猫に植物ベース食を与える場合は極めて慎重な栄養設計が必要です。サプリメントでタウリンやアラキドン酸を補うことは理論上可能ですが、獣医師の監督なしに行うことは推奨されていません。 ## 飼い主としてどうすればいい? - : 肉も穀物も野菜も消化できる雑食動物です。「肉だけが良い」わけではなく、バランスの取れた総合栄養食が最善です
  • : 動物性原料が不可欠な真性肉食動物です。タウリンが十分に含まれた総合栄養食を選びましょう
  • どちらの場合も、AAFCO や FEDIAF の栄養基準に適合した総合栄養食を基本にすることが安心です
  • 手作り食や特殊な食事を検討する場合は、必ず獣医師に相談してください ## 犬と猫、ひと目で分かる違い | 項目 | 犬 🐕 | 猫 🐈 | |------|-------|-------| | 分類 | 雑食動物 | 真性肉食動物 | | デンプン消化 | AMY2B 遺伝子拡張で可能 | 限定的 | | タウリン | 体内合成可能 | 合成不足、食事から必須 | | アラキドン酸 | リノール酸から変換可能 | 変換能力が低い | | ビタミンA | β-カロテンから変換可能 | 変換能力が限定的 | | 最低タンパク質(AAFCO) | 18% | 26% | --- 📖 読了目安: 4分 🔬 参考文献: PMID 36803865 / 36669053 / 38625934 / 40315231 / 23354050 / NRC 2006 ⚕️ 気になる症状がある場合は、必ず獣医師にご相談ください。

出典(6件)

  • 査読論文Li P & Wu G. J Anim Sci Biotechnol 2023;14:19 — 犬猫のアミノ酸代謝PubMed (PMID 36803865)
  • 査読論文Dominguez-Oliva A et al. Vet Sci 2023;10(1):52 — ビーガン食の系統的レビューPubMed (PMID 36669053)
  • 査読論文Linde A et al. PLoS ONE 2024;19(4) — 犬の植物ベース食12か月PubMed (PMID 38625934)
  • 査読論文Katica J et al. PLoS ONE 2025;20(5) — AMY2B品種差PubMed (PMID 40315231)
  • 査読論文Axelsson E et al. Nature 2013;495:360-364 — 犬のデンプン消化適応PubMed (PMID 23354050)
  • 業界標準NRC. Nutrient Requirements of Dogs and Cats. 2006

この記事に出てくる成分

この記事は一般的な情報であり、診断や個別の助言ではありません。 うちの子に合うかどうかは、かかりつけの獣医師にご相談ください。