犬猫小町(準備中)

異物誤飲・消化管内異物

Gastrointestinal Foreign Body 対象: 犬・猫 分類: 消化器(救急) 最終更新: 2026-08-06

食事との関係

骨や大きなデンタルチューは食道異物の原因になりうる(MSDは食道異物として骨が最多とし、ローハイド・デンタルチューも挙げる)。フード自体が原因の疾患ではないが、拾い食い癖のある個体は与え方・置き方の管理が予防になる

家で気づけるサイン

  • 繰り返し吐く・食べても吐き戻す
  • 食欲がなくなる・水も受けつけない
  • 元気がない・ぐったりする(進行するとショック)
  • 下痢をする、または便が出ない
  • おなかを触られるのを嫌がる・痛がる
  • よだれが多い・えづく・何度も飲み込もうとする(食道に詰まった場合)
  • 舌の裏やお尻からひもが見える(引っぱらずに受診)

受診の目安

緊急 — 異物の種類で緊急度が変わる。ひも状異物・ボタン電池・針・大きな塊が疑われる場合は無症状でも直ちに受診。繰り返す嘔吐・ぐったり・腹痛は時間帯を問わず救急。何を飲んだか不明でも様子見にしない

年齢の傾向

全年齢だが若齢に多い。犬は拾い食い、猫は糸やひもで遊ぶ延長で起こる

なりやすいとされる犬種・猫種

  • 特定品種の強い好発なし(品種より年齢・拾い食いの癖・室内環境の要因が大きい)
  • 若い個体に多い(かかった個体は比べた集団よりはっきり若い。犬はオス、猫は不妊手術済みが多いと報告・PMID 42088454)
  • 猫はひも状異物(糸・毛糸・デンタルフロス)による腸閉塞が犬より多い(MSD)
  • 小型犬は食道に停留する例の割合が高いと報告(261頭中の食道異物の92.79%が12kg未満。来院集団の構成を反映し品種素因の証明ではない・PMID 41069716)

詳しい解説

異物誤飲・消化管内異物(Gastrointestinal Foreign Body)

食べ物ではない物を飲み込み、食道・胃・腸に留まって通過障害(閉塞)を起こす状態。MSD Veterinary Manual は、消化管閉塞はしばしば止められない嘔吐に至り、その結果は生命を脅かしうるとして救急として扱うべきとしている。異物は消化されない物(プラスチック・石など)、消化が遅い物(骨など)、大きすぎて通過できない物が典型。

犬と猫で傾向が異なる。MSDは「犬は猫より異物を飲み込んで消化管閉塞を起こしやすい」とする一方、「猫はひも状異物による腸閉塞を起こしやすい」としており、猫は糸・毛糸・デンタルフロスなどで遊ぶうちに飲み込むことが多い。

保険の請求・手術で上位に入る頻出疾患。何を飲んだかで緊急度が大きく変わるのがこの疾患の特徴で、症状の有無だけで判断すると危険なものがある。

好発の背景(品種より年齢・行動・生活環境)

  • 特定品種の強い好発は知られていない。 効いてくるのは年齢・拾い食いの癖・室内に何が置いてあるかという生活環境。
  • 若齢に多い。 単施設20年分の後ろ向き研究では、消化管異物閉塞と診断された犬・猫はいずれも参照集団より有意に若く、犬はオスが有意に多く、猫は不妊手術済みが多かった(Meomartino 2026・PMID 42088454)。同研究の有病率は犬0.58%・猫1%で、紹介施設全体からみれば高頻度ではないが、起きたときの緊急度が高い疾患である。
  • 体格で詰まる場所が変わる。 261頭の犬の後ろ向き研究では、食道異物例の92.79%が12kg未満の小型犬だった一方、胃内異物は中型・大型犬にも広く分布した(Laiket 2025・PMID 41069716)。ただしこれは受診した集団の構成を反映しており、品種素因の証明ではない。
  • 猫のひも状異物は遊びの延長で起こるため、若く活発な個体ほど機会が多い(MSD)。

異物の種類と緊急度

同じ「誤飲」でも危険度は一律でない。次のものは症状がなくても直ちにの側に倒す。

  • ひも状異物(糸・毛糸・リボン・デンタルフロス): MSDは、ひも状異物は腸穿孔のリスクが高く、一端が舌の付け根や胃に引っかかったまま他端が蠕動で先へ送られ、腸が手繰り寄せられて腸壁を切り裂くと説明している。口やお尻からひもが見えても絶対に引っぱらない(体内で腸に食い込んでいる可能性があるため)。直ちに受診。
  • ボタン電池・ディスク型電池: MSDは、ディスク型電池は食道に停留して食道壁に電流を流し、穿孔しうる円形の潰瘍をつくると記載している。電池の誤飲で関与が最も多いのは犬。電池は緊急。なお外装が破れている可能性がある場合は催吐を行うべきでないとされており、家庭で吐かせようとしてはいけない。
  • 骨・針・釣り針・デンタルチュー: MSDは食道異物として骨が最多とし、針・釣り針・木片・ローハイド・デンタルチューも挙げたうえで、食道異物は診断され次第ただちに摘出すべきとしている。放置すると食道狭窄(最多の合併症)や穿孔(縦隔炎・膿胸など)につながる。
  • 大きく丸い物: 完全閉塞になりやすい(MSD)。逆にひも状や小さい物は部分閉塞になりやすく、症状が軽く出るぶん見逃されやすい点に注意。

飼い主が気づける徴候

MSDが挙げる消化管閉塞の徴候は、食欲廃絶・吐出・嘔吐・下痢・元気消失で、進行するとショック。身体検査で腹部の痛みや触知できる腸の塊が見つかることがある。

  • 繰り返し吐く・食べても吐き戻す
  • 食欲がなくなる、水も受けつけない
  • 元気がなくぐったりする
  • 下痢をする、または便が出ない
  • おなかを触られるのを嫌がる・痛がる
  • よだれが多い・えづく・何度も飲み込もうとする・飲み込みにくそう(食道停留時の徴候としてMSDは流涎・えずき・嚥下困難・吐出・繰り返す嚥下動作を挙げる)
  • 舌の裏やお尻からひもが見える

受診目安・予防

  • 「飲み込んだ」と分かった時点で、症状がなくても病院に連絡する。 部分閉塞では症状が軽く、時間が経ってから悪化することがある。
  • 繰り返す嘔吐・ぐったり・腹痛は、時間帯を問わず救急対応のできる病院へ。ひも状異物・電池・針が疑われる場合は無症状でも直ちに
  • 自己判断で吐かせない。 特に電池のような腐食性のものやとがった物では危険(MSDは外装の破損が疑われる電池で催吐を行うべきでないとする)。何を・どれくらい・いつ飲んだかを記録し、同じ物やパッケージを持参する(→ 応急処置・中毒対応症状トリアージ)。
  • チョコレート・キシリトール・ネギ類など中毒性の食材を食べた場合は、閉塞とは別の対応軸になる(→ NG食材・中毒)。
  • 予防は生活環境の管理が中心。 猫は糸・毛糸・リボン・ヘアゴム・デンタルフロスを出しっぱなしにしない(MSDが猫の典型例として挙げる物)。犬はおもちゃの破損を定期的に確認し、飲み込める大きさの物を床に置かない。ボタン電池は厳重に保管する。
  • 画像検査(X線・超音波)による確認や摘出方法の選択は担当獣医師の診察に基づく。本ページでは扱わない。

費用の目安

異物誤飲・消化管内異物にかかるお金は、症状の重さ・通う回数・住んでいる地域・その病院の料金設定で変わります。 ここに出すのは見積もりではなく、公表されている調査から拾った幅です。 自分の家の場合にいくらになるかは、かかりつけの病院で聞くのが確実です。

動物病院の料金表から(項目ごと)

項目金額この検査・処置を行っていない病院もとの表
内視鏡検査犬猫共通22,500円57.4%p.75(PDF p.80)
胃切開(異物摘出)犬猫共通45,000円7.6%p.51(PDF p.56)
腸切開(異物摘出)犬猫共通45,000円7.3%p.52(PDF p.57)
腸切除・吻合犬猫共通62,500円9.3%p.52(PDF p.57)

「この検査・処置を行っていない病院」の欄は、そう答えた病院の割合です。数字が大きい項目は、 かかりつけでは対応しておらず、紹介先の病院に移ることがあります。

出典: 日本獣医師会 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査 調査結果(令和5年9月)

いつのデータか: 2021年8月から10月にかけて動物病院に行ったアンケートで、そのときの料金設定です

読むときの注意: 回答した病院の自己申告です。獣医師の団体が料金の基準を決めることは法律で禁じられているため、全国共通の定価はありません。回答した病院の96.3%はふだんの診察を担う病院なので、紹介先の専門病院の料金とはずれることがあります

この数字の読み方

金額はどれも過去の調査をまとめたもので、いまの料金や、目の前の子にかかる額とは違います。 税込みか税別かも調査によって扱いが違います。

病院ごとに料金は自由に決められるため、同じ処置でも差が出ます。 気になるときは、受診の前に電話で聞いても構いません。金額を先に確認するのは失礼なことではありません。

獣医師に相談するための質問リスト

そのまま診察に持って行けるように整理しました。答えは診察でしか決まりません。

  1. いま与えているフードは、異物誤飲・消化管内異物と診断された今の状態に合っていますか?
  2. 食事の内容や与え方について、いま変えたほうがよい点はありますか?(種類・量・回数・水分の取り方)
  3. おやつやトッピングは続けてよいですか?避けたほうがよいものはありますか?
  4. 家で見ておくべきサインはどれですか?(気づいた変化: 繰り返し吐く・食べても吐き戻す/食欲がなくなる・水も受けつけない など)
  5. 次の受診や再検査はいつ頃がよいですか?その間に悪化を示すサインはどれですか?
  6. 今後の健診や定期検査で、確認しておくとよい項目はありますか?
  7. 食事以外に、家でできる工夫(環境・運動・体重)はありますか?

出典(5件)

  • 業界標準確認日 2026-08-06

    Gastrointestinal Obstruction in Small Animals

    犬は猫より異物を飲み込んで消化管閉塞を起こしやすい一方、猫はひも状異物による腸閉塞を起こしやすい。猫は糸・毛糸・デンタルフロス等で遊ぶうちに飲み込む。大きく丸い物は完全閉塞、ひも状や小さい物は部分閉塞になりやすい。ひも状異物は腸穿孔のリスクが高く、一端が舌の付け根や胃に固定されたまま他端が蠕動で先へ送られ腸が手繰り寄せられて腸壁を切り裂く。徴候は食欲廃絶・吐出・嘔吐・下痢・元気消失・ショック、身体検査で腹痛や触知可能な腸の塊。しばしば止められない嘔吐に至り生命を脅かしうるため救急として扱う

    出典サイト

  • 業界標準確認日 2026-08-06

    Esophageal Foreign Bodies in Small Animals

    食道異物は猫より犬に多い。骨が最も一般的で、ほかに針・釣り針・木片・ローハイド・デンタルチューも食道に停留しうる。徴候は流涎・えずき・嚥下困難・吐出・繰り返す嚥下動作。診断され次第ただちに摘出すべきとされる。合併症は食道狭窄が最多で、穿孔により胸膜炎・縦隔炎・膿胸・気胸・気管食道瘻・致死的な大動脈食道瘻に至りうる

    出典サイト

  • 業界標準確認日 2026-08-06

    Toxicoses From Corrosive Agents in Animals

    電池の誤飲は消化管の腐食性損傷と閉塞の両方のリスクがあり、関与するのは犬が最も多い。アルカリゲルは接触部に融解壊死を起こし深部まで及ぶ熱傷となる。ディスク型(ボタン型)電池は食道に停留して食道壁に電流を流し、穿孔しうる円形の潰瘍をつくる。電池の外装が破れている可能性がある場合は催吐を行うべきでない

    出典サイト

  • 査読論文確認日 2026-08-06

    知覚される頻度とは異なり有病率は低く、若齢のオス犬と若齢の不妊手術済み猫に多い

    消化管異物閉塞の有病率は犬0.58%・猫1%と紹介施設全体では低いが、罹患動物は両種とも参照集団より有意に若齢。犬はオスが有意に多く(p<0.002)、猫は不妊手術済みが多かった(p<0.03)。結論は「知覚される頻度とは異なり有病率は低く、若齢のオス犬と若齢の不妊手術済み猫に多い」

    PubMed (PMID 42088454)DOI 10.1016/j.ejro.2026.100753

  • 査読論文確認日 2026-08-06

    Laiket L ほか, 2025, 後ろ向き研究(261頭), Journal…

    上部消化管異物の犬261頭。胃内異物57.47%・食道異物42.53%。食道異物例の92.79%が小型犬(12kg未満)で、胃内異物は中型22.00%・大型21.33%も占めた。小型犬は食道、中〜大型犬は胃に停留しやすい(p<0.001)

    PubMed (PMID 41069716)DOI 10.5455/javar.2025.l924

このページは受診の判断を支える一般情報であり、診断や個別の助言ではありません。 症状や食事の方針は、かかりつけの獣医師の診察に基づいて決めてください。

関連する読みもの