犬猫小町(準備中)

子宮蓄膿症

Pyometra 対象: 犬・猫 分類: 生殖器(救急) 最終更新: 2026-08-06

食事との関係

特になし(食事が直接の原因・管理対象となる疾患ではない)。ただし「急に水を飲む量が増えた」「食べない」は重要なサインなので日頃の食事量・飲水量を把握しておく

家で気づけるサイン

  • 陰部から膿のようなおりものが出る(子宮頸管が開いているとき)
  • 水をたくさん飲む・尿の量が増える(多飲多尿)
  • 食欲が落ちる・まったく食べない、元気がない
  • 嘔吐、発熱、脱水
  • おなかが張ってくる(頸管が閉じているときは膿が外に出ず気づきにくい)

受診の目安

緊急〜当日受診 — 未避妊メスで発情後1〜4か月に上記が出たら、夜間でもすぐ動物病院へ連絡する。ぐったり・繰り返す嘔吐・呼吸が速いなど全身状態が悪ければ救急

年齢の傾向

中〜高齢の未避妊メスに多い(犬の診断時平均7.0歳・SD±2.2)。発情(ヒート)終了後おおむね4か月以内の診断が一般的

なりやすいとされる犬種・猫種

詳しい解説

子宮蓄膿症(Pyometra)

子宮蓄膿症は、未避妊のメス犬・メス猫の子宮に細菌感染が起こり、膿がたまる病気です。Hagman の総説(2022)は「潜在的に生命を脅かし、救急疾患とみなされる」と明記しており、放置すると腹膜炎・エンドトキシン血症・全身性炎症反応症候群(SIRS)といった全身の合併症に進みます。「元気がない・食べない」だけで受診が遅れやすい一方、進行は速く、様子を見てよい病気ではありません

発症の背景にはプロゲステロンの働きがあります。MSD Veterinary Manual によれば、発情のあとの発情休止期(ダイエストラス)にプロゲステロンが高い状態が続くと、免疫が抑えられ、子宮腺の分泌が増え、子宮頸管が閉じて排出されにくくなり、子宮の収縮も弱まります。ここに細菌が加わって膿がたまります。診断は一般に発情終了後4か月以内、中〜高齢の個体で多くみられます。

決して珍しい病気ではありません。スウェーデンの保険データベース研究では、10歳までに未避妊のメス犬の19〜24%が子宮蓄膿症を経験したと報告されています(Jitpean 2012 / Egenvall 2001)。

好発品種(根拠の別)

飼い主が気づける徴候

  • 陰部から膿のような・血の混じったおりものが出る(子宮頸管が開いているとき)
  • 水を飲む量・尿の量が急に増える(多飲多尿)
  • 食欲が落ちる、まったく食べない
  • 元気がない、寝てばかりいる
  • 嘔吐する、熱っぽい、脱水(背中の皮膚をつまむと戻りが遅い)
  • おなかが張ってくる — 頸管が閉じているタイプは膿が外に出ないため、おりものがなく気づきにくい

受診目安・予防

  • 未避妊のメスで、発情から1〜4か月のあいだにこれらの徴候が出たら、夜間でもすぐ動物病院に連絡してください。 特に「膿のようなおりもの+元気消失」「水をがぶ飲みするようになった」は典型的な組み合わせです。
  • ぐったりしている・繰り返し吐く・呼吸が速い・歯ぐきが白いなど全身状態が悪い場合は救急対応が必要です。
  • 予防に関する疫学的事実として、卵巣子宮摘出(避妊手術)を受けた個体ではこの病気は基本的に発生しません(子宮の一部が残る例外を除く)。避妊の要否・時期は他の健康影響も含めた総合判断になるため、担当獣医師と相談してください。
  • プロゲスチン・エストロゲンなどホルモン剤の使用歴はリスク要因として知られています。使用歴がある場合は受診時に必ず伝えてください。
  • 未避妊で飼う場合は、発情の日付を記録し、発情後2〜3か月の飲水量・食欲・おりものの変化に注意すると気づきやすくなります。
  • 本ページは受診判断の支援を目的とし、治療の選択は担当獣医師の診察に基づきます。

費用の目安

子宮蓄膿症にかかるお金は、症状の重さ・通う回数・住んでいる地域・その病院の料金設定で変わります。 ここに出すのは見積もりではなく、公表されている調査から拾った幅です。 自分の家の場合にいくらになるかは、かかりつけの病院で聞くのが確実です。

動物病院の料金表から(項目ごと)

項目金額この検査・処置を行っていない病院もとの表
子宮蓄膿症手術(卵巣子宮摘出)45,000円3.1%p.54(PDF p.59)

「この検査・処置を行っていない病院」の欄は、そう答えた病院の割合です。数字が大きい項目は、 かかりつけでは対応しておらず、紹介先の病院に移ることがあります。

出典: 日本獣医師会 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査 調査結果(令和5年9月)

いつのデータか: 2021年8月から10月にかけて動物病院に行ったアンケートで、そのときの料金設定です

読むときの注意: 回答した病院の自己申告です。獣医師の団体が料金の基準を決めることは法律で禁じられているため、全国共通の定価はありません。回答した病院の96.3%はふだんの診察を担う病院なので、紹介先の専門病院の料金とはずれることがあります

この数字の読み方

金額はどれも過去の調査をまとめたもので、いまの料金や、目の前の子にかかる額とは違います。 税込みか税別かも調査によって扱いが違います。

病院ごとに料金は自由に決められるため、同じ処置でも差が出ます。 気になるときは、受診の前に電話で聞いても構いません。金額を先に確認するのは失礼なことではありません。

獣医師に相談するための質問リスト

そのまま診察に持って行けるように整理しました。答えは診察でしか決まりません。

  1. いま与えているフードは、子宮蓄膿症と診断された今の状態に合っていますか?
  2. 食事の内容や与え方について、いま変えたほうがよい点はありますか?(種類・量・回数・水分の取り方)
  3. おやつやトッピングは続けてよいですか?避けたほうがよいものはありますか?
  4. 家で見ておくべきサインはどれですか?(気づいた変化: 陰部から膿のようなおりものが出る(子宮頸管が開いているとき)/水をたくさん飲む・尿の量が増える(多飲多尿) など)
  5. 次の受診や再検査はいつ頃がよいですか?その間に悪化を示すサインはどれですか?
  6. 今後の健診や定期検査で、確認しておくとよい項目はありますか?
  7. 食事以外に、家でできる工夫(環境・運動・体重)はありますか?

出典(5件)

  • 業界標準確認日 2026-08-06

    Cystic Endometrial Hyperplasia–Pyometra Complex in Small Animals

    「中〜高齢の未避妊メスで、非妊娠の発情周期を1回以上経た後に起こる」「発情休止期(diestrus)に始まるプロゲステロン依存性の子宮疾患」。プロゲステロンは免疫抑制・子宮腺分泌の亢進・子宮頸管の閉鎖・子宮筋収縮の低下を介して関与。徴候として多飲多尿・食欲低下・発熱・脱水・嘔吐・元気消失・腹部膨満(閉鎖性)・腟からの排出物(開放性)を列挙

    出典サイト

  • 査読論文確認日 2026-08-06

    未避妊のメス犬・メス猫でよくみられる疾患

    「未避妊のメス犬・メス猫でよくみられる疾患」「一般に発情後4か月以内に、中〜高齢で診断される」「潜在的に生命を脅かし、救急疾患とみなされる」と明記

    PubMed (PMID 35465903)DOI 10.1016/j.cvsm.2022.01.004

  • 査読論文確認日 2026-08-06

    Hagman R, 2023, 総説, Veterinary Clinics o…

    腹膜炎・エンドトキシン血症・全身性炎症反応症候群(SIRS)などの合併症はまれではなく、より重篤な病態と関連すると記載

    PubMed (PMID 37270345)DOI 10.1016/j.cvsm.2023.04.009

  • 査読論文確認日 2026-08-06

    Egenvall A ほか, 2001, コホート研究(保険データベース), J…

    スウェーデンの保険DB20万頭超。10歳までに平均23〜24%のメス犬が子宮蓄膿症を経験し、犬種により10〜54%と幅がある。多変量解析でラフ・コリー/ロットワイラー/キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル/ゴールデン・レトリーバー/バーニーズ・マウンテン・ドッグ/イングリッシュ・コッカー・スパニエルのリスクが高い

    PubMed (PMID 11817057)DOI 10.1892/0891-6640

  • 査読論文確認日 2026-08-06

    Jitpean S ほか, 2012, コホート研究(保険データベース), Re…

    26万頭超のメス犬。10歳までに子宮蓄膿症19%・乳腺腫瘍13%・いずれか/両方30%が発症。診断時平均年齢は子宮蓄膿症7.0歳(SD±2.2)

    PubMed (PMID 23279535)DOI 10.1111/rda.12103

このページは受診の判断を支える一般情報であり、診断や個別の助言ではありません。 症状や食事の方針は、かかりつけの獣医師の診察に基づいて決めてください。