甲状腺機能亢進症
Hyperthyroidism 対象: 猫 分類: 内分泌 最終更新: 2026-07-11
食事との関係
食事管理が関わる場面もあるが方針は診断後に獣医師が判断。食欲・体重変化のモニタリングが重要
家で気づけるサイン
- よく食べるのに痩せていく(食欲旺盛なのに体重減少)
- 落ち着きがない・活動性が高すぎる、過度に鳴く
- 嘔吐、軟便・便の量が増える
- 水をたくさん飲む・尿が増える(多飲多尿)
- 被毛が乱れる・毛づくろいが減る
- ※高齢では逆に元気消失・食欲不振を示す非典型(アパシー型)もある
受診の目安
早めに受診(食欲があるのに痩せる・落ち着きがない等に気づいたら)。呼吸が速い・ぐったりは当日〜救急
年齢の傾向
中〜高齢に多い(多くは7歳超、平均13歳前後)
なりやすいとされる犬種・猫種
- 特定品種の強い好発なし(複数の疫学研究で品種の有意な影響は認められない・疫学的知見)
- シャム・ヒマラヤン等の純血種はむしろ低リスクとの報告がある(疫学的知見)
詳しい解説
甲状腺機能亢進症(Hyperthyroidism)
甲状腺機能亢進症は、甲状腺から甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、全身の代謝が過度に高まる病気で、中〜高齢の猫にとても多い内分泌疾患です。多くは7歳を超えてから、平均すると13歳前後で見つかるとされます。代謝が上がりすぎるため、たくさん食べているのに痩せていくのが特徴的なサインです。
進行すると心臓(心拍数の増加)や血圧、腎臓にも負担がかかることが知られます。高齢の猫では、逆に元気や食欲が落ちて見える非典型(アパシー型)を示すこともあります。
好発の背景(品種より加齢)
- 特定品種の強い好発は知られていません。 複数の疫学研究で、品種・性別などによる発生率の有意な差は認められていません。
- むしろシャム・ヒマラヤンなどの純血種ではリスクが低いとの報告があります。最大の背景要因は加齢です。
飼い主が気づける徴候
- よく食べる(むしろ食欲旺盛)のに体重が減っていく
- 落ち着きがなくそわそわする、夜間などに過度に鳴く
- 嘔吐、軟便や便の量が増える
- 水を飲む量・尿の量が増える
- 被毛がパサつく・毛づくろいが減る
- ※高齢では逆に元気・食欲が落ちて見えることもある
受診目安・予防
- 「食欲があるのに痩せる」「落ち着きがない」に気づいたら早めに受診を。 体重の変化は重要な手がかりです。
- 呼吸が速い・ぐったりしている場合は当日〜救急での受診を。
- 中〜高齢の猫は年1回以上の健診で、血中T4(甲状腺ホルモン)を含む血液検査を受けると早期に気づきやすくなります。
- 家庭で体重を定期的に記録しておくと、少しずつの減少に気づきやすくなります。
- 本ページは受診判断の支援を目的とし、治療の選択は担当獣医師の診察に基づきます。
食事の考え方
猫のこの病気には、ヨウ素を抑えた食事という選択肢があります。
この節は、獣医師が食事を選ぶときに何を見ているかを説明するものです。銘柄をすすめるものでも、自己判断で始めてよいという意味でもありません。 実際に何を、どれだけ与えるかは、その子の検査結果をもとに獣医師が決めます。
甲状腺ホルモンの材料になるヨウ素を食事から制限することで、ホルモンの量を管理する考え方です。
| 何を | なぜ見るか |
|---|---|
| ヨウ素 | ホルモンの材料になるため、量を抑えた設計があります |
| たんぱく質・カロリー | 体重が落ちやすい状態なので、痩せさせない配慮も並行します |
この方法は「それだけしか食べない」が前提です。ほかのフードやおやつ、 ヨウ素を多く含む昆布のような素材が混ざると成り立ちません。 多頭飼いでは、ほかの猫の食事を食べてしまわない工夫が要ります。
薬・手術・放射性ヨウ素治療など他の選択肢との比較は獣医師と相談してください。 食事による管理が向く子とそうでない子がいます。
腎臓の状態が隠れていることがあり、慢性腎臓病との兼ね合いも判断の材料になります。
費用の目安
甲状腺機能亢進症にかかるお金は、症状の重さ・通う回数・住んでいる地域・その病院の料金設定で変わります。 ここに出すのは見積もりではなく、公表されている調査から拾った幅です。 自分の家の場合にいくらになるかは、かかりつけの病院で聞くのが確実です。
実際に支払われた金額から
| 対象 | 何の金額か | 金額 | 値の種類 | もとの表 |
|---|---|---|---|---|
| 猫全診療・猫全体10歳以上 | 1年間にかかった総額 | 109,981円 | 平均 | p.63 図表2-3-8(10歳以上) |
| 猫全診療・猫全体10歳以上 | 1年間にかかった総額 | 84,226円 | まんなかの値 | p.63 図表2-3-8(10歳以上) |
出典: アニコム家庭どうぶつ白書2025
いつのデータか: 2023年4月から2024年3月までに保険の契約を始めた犬と猫の記録です。通院・入院・手術をあわせた金額です
読むときの注意: 保険に入っている家庭の記録です。窓口でその場で精算できるぶん受診しやすく、入っていない家庭より金額が高めに出ることがあります。契約できる年齢に上限があるため、高齢になってから迎えた子は含まれにくくなっています
動物病院の料金表から(項目ごと)
| 項目 | 金額 | この検査・処置を行っていない病院 | もとの表 |
|---|---|---|---|
| 甲状腺ホルモン(T4)検査犬猫共通 | 4,000円 | 7.3% | p.70(PDF p.75) |
「この検査・処置を行っていない病院」の欄は、そう答えた病院の割合です。数字が大きい項目は、 かかりつけでは対応しておらず、紹介先の病院に移ることがあります。
出典: 日本獣医師会 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査 調査結果(令和5年9月)
いつのデータか: 2021年8月から10月にかけて動物病院に行ったアンケートで、そのときの料金設定です
読むときの注意: 回答した病院の自己申告です。獣医師の団体が料金の基準を決めることは法律で禁じられているため、全国共通の定価はありません。回答した病院の96.3%はふだんの診察を担う病院なので、紹介先の専門病院の料金とはずれることがあります
この数字の読み方
金額はどれも過去の調査をまとめたもので、いまの料金や、目の前の子にかかる額とは違います。 税込みか税別かも調査によって扱いが違います。
病院ごとに料金は自由に決められるため、同じ処置でも差が出ます。 気になるときは、受診の前に電話で聞いても構いません。金額を先に確認するのは失礼なことではありません。
獣医師に相談するための質問リスト
そのまま診察に持って行けるように整理しました。答えは診察でしか決まりません。
- いま与えているフードは、甲状腺機能亢進症と診断された今の状態に合っていますか?
- 食事の内容や与え方について、いま変えたほうがよい点はありますか?(種類・量・回数・水分の取り方)
- おやつやトッピングは続けてよいですか?避けたほうがよいものはありますか?
- 家で見ておくべきサインはどれですか?(気づいた変化: よく食べるのに痩せていく(食欲旺盛なのに体重減少)/落ち着きがない・活動性が高すぎる、過度に鳴く など)
- 次の受診や再検査はいつ頃がよいですか?その間に悪化を示すサインはどれですか?
- 今後の健診や定期検査で、確認しておくとよい項目はありますか?
- 食事以外に、家でできる工夫(環境・運動・体重)はありますか?
出典(2件)
- 査読論文確認日 2026-07-11
Carney HC ほか, 2016, 診療ガイドライン, Journal of…
AAFP 猫甲状腺機能亢進症管理ガイドライン。品種・性別等の有意な影響を認めない研究を引用
- 業界標準確認日 2026-07-11
Hyperthyroidism in Animals
7歳超の成熟〜高齢猫に多い成熟猫の一般的な内分泌疾患。食欲があるのに痩せる・活動亢進・過度の鳴き・嘔吐・多飲多尿等を記載
このページは受診の判断を支える一般情報であり、診断や個別の助言ではありません。 症状や食事の方針は、かかりつけの獣医師の診察に基づいて決めてください。