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乳腺腫瘍

Mammary Tumor 対象: 犬・猫 分類: 腫瘍 最終更新: 2026-08-06

食事との関係

犬では肥満と赤身肉中心の食事が発生リスク上昇と関連づけられている(MSD)。体重管理は関与しうる

家で気づけるサイン

  • 乳腺(おっぱいのライン)に沿ってしこり・かたまりが触れる
  • しこりが大きくなる、複数箇所にできる
  • しこりの表面が崩れる・潰瘍になる・出血する
  • 乳腺のまわりが赤く腫れて痛がる(炎症性の型)
  • 猫では小さく動く結節から、皮膚に固着した大きな塊まで幅がある

受診の目安

早めに受診(乳腺にしこりを見つけたら様子見せず受診)。表面が崩れる・急に赤く腫れて痛がる・元気食欲が落ちる場合は当日受診

年齢の傾向

犬は5歳未満での診断はまれで、平均7〜11歳(保険DBでは診断時平均8.0歳・SD±1.6)。猫も高齢・純血種で多い

なりやすいとされる犬種・猫種

詳しい解説

乳腺腫瘍(Mammary Tumor)

乳腺腫瘍は、おなか側に左右2列に並ぶ乳腺にできるしこりです。犬と猫で性質が大きく異なります。

  • : MSD Veterinary Manual によればおよそ半数が悪性で、残り半分は良性です。5歳未満での診断はまれで、平均7〜11歳に多くみられます。
  • : 80〜90%が悪性とされ、犬より格段に厳しい病気です。しかも進行してから見つかることが多く、遠隔転移がある猫の約半数は見た目に元気そうに見えるとも報告されています。

猫では見つかったときの大きさが見通しを大きく左右します。MSD によれば、腫瘍径が2cm未満・2〜3cm・3cm超で生存期間中央値はそれぞれ3年超・約2年・約6か月と報告されています。「小さいうちに気づけるか」がそのまま結果に効くという点で、家庭でのチェック習慣の価値が高い疾患です。

決してまれではありません。スウェーデンの保険データベース研究では、メス犬の**10歳までに13%**が乳腺腫瘍で請求を経験しています(Jitpean 2012 / Egenvall 2005)。

好発品種(根拠の別)

飼い主が気づける徴候

  • おなか側の乳腺のラインに沿って、しこり・かたまりが触れる(乳頭の周囲を指の腹で確認する
  • しこりが少しずつ大きくなる、複数の場所にできる
  • しこりの表面が崩れる・潰瘍になる・出血する
  • 乳腺のまわりが赤く腫れ、痛がる(炎症性の型)
  • 犬では後方(後ろ足寄り)の乳腺に多く、50〜70%は複数の腫瘍を伴います
  • 猫は小さく動く結節から、皮膚に固着した大きな塊までさまざま。しこりが1つでも、全部の乳腺を確認する

受診目安・予防

  • 乳腺にしこりを見つけたら、小さくても様子見せず早めに受診してください。 特に猫は悪性の割合が高く、2cm未満で見つかるかどうかで見通しが変わります。
  • 表面が崩れる・急に赤く腫れて痛がる・元気や食欲が落ちる場合は当日受診を。
  • 早期発見の要は日頃の触診習慣です。おなかを撫でるとき、乳頭に沿った2列のラインを指の腹で軽くなぞる癖をつけると、小さなしこりに気づきやすくなります。
  • 避妊時期と発生リスクの関係(疫学的事実):
    • は関連が明確で、MSD によれば生後6か月までの避妊で91%、12か月までで**86%**リスクが低下する一方、2歳以降の避妊では利益が認められないと報告されています。
    • は、MSD が「初回発情前に避妊を受けたメス犬は発生率が非常に低い」「3回目の発情周期より後の避妊はリスク低下をもたらさなかった」としています。ただし Beauvais ら(2012)のシステマティックレビューは、犬におけるこの予防効果のエビデンスを**「弱い」と評価**しており、断定はできません。
    • 避妊の要否・時期は他の健康影響も含めた総合判断になるため、担当獣医師と相談してください。
  • エストロゲン・プロゲスチンの使用歴はリスク要因として知られています(犬・猫とも)。使用歴がある場合は受診時に伝えてください。
  • 犬では肥満と赤身肉中心の食事もリスク上昇と関連づけられており、体重管理が関与しうるとされています。
  • 本ページは受診判断の支援を目的とし、治療の選択は担当獣医師の診察に基づきます。

費用の目安

乳腺腫瘍にかかるお金は、症状の重さ・通う回数・住んでいる地域・その病院の料金設定で変わります。 ここに出すのは見積もりではなく、公表されている調査から拾った幅です。 自分の家の場合にいくらになるかは、かかりつけの病院で聞くのが確実です。

動物病院の料金表から(項目ごと)

項目金額この検査・処置を行っていない病院もとの表
乳腺腫瘍部分切除犬猫共通27,500円4%p.56(PDF p.61)
乳腺腫瘍全切除(片側全摘等)犬猫共通45,000円8.5%p.56(PDF p.61)

「この検査・処置を行っていない病院」の欄は、そう答えた病院の割合です。数字が大きい項目は、 かかりつけでは対応しておらず、紹介先の病院に移ることがあります。

出典: 日本獣医師会 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査 調査結果(令和5年9月)

いつのデータか: 2021年8月から10月にかけて動物病院に行ったアンケートで、そのときの料金設定です

読むときの注意: 回答した病院の自己申告です。獣医師の団体が料金の基準を決めることは法律で禁じられているため、全国共通の定価はありません。回答した病院の96.3%はふだんの診察を担う病院なので、紹介先の専門病院の料金とはずれることがあります

この数字の読み方

金額はどれも過去の調査をまとめたもので、いまの料金や、目の前の子にかかる額とは違います。 税込みか税別かも調査によって扱いが違います。

病院ごとに料金は自由に決められるため、同じ処置でも差が出ます。 気になるときは、受診の前に電話で聞いても構いません。金額を先に確認するのは失礼なことではありません。

獣医師に相談するための質問リスト

そのまま診察に持って行けるように整理しました。答えは診察でしか決まりません。

  1. いま与えているフードは、乳腺腫瘍と診断された今の状態に合っていますか?
  2. 食事の内容や与え方について、いま変えたほうがよい点はありますか?(種類・量・回数・水分の取り方)
  3. おやつやトッピングは続けてよいですか?避けたほうがよいものはありますか?
  4. 家で見ておくべきサインはどれですか?(気づいた変化: 乳腺(おっぱいのライン)に沿ってしこり・かたまりが触れる/しこりが大きくなる、複数箇所にできる など)
  5. 次の受診や再検査はいつ頃がよいですか?その間に悪化を示すサインはどれですか?
  6. 今後の健診や定期検査で、確認しておくとよい項目はありますか?
  7. 食事以外に、家でできる工夫(環境・運動・体重)はありますか?

出典(6件)

  • 業界標準確認日 2026-08-06

    Mammary Tumors in Dogs

    「およそ半数の乳腺腫瘍が悪性」。5歳未満の診断はまれで平均7〜11歳。純血種・小型犬種、肥満、赤身肉中心の食事がリスク要因。「初回発情前に卵巣子宮摘出を受けたメス犬は乳腺腫瘍の発生率が非常に低い」「3回目の発情周期より後の卵巣子宮摘出はリスク低下をもたらさなかった」。エストロゲン・プロゲスチンへの長期曝露および外因性投与歴もリスク上昇と関連。後方の乳腺が前方より多く侵され、50〜70%の症例で複数腫瘍

    出典サイト

  • 業界標準確認日 2026-08-06

    Mammary Tumors in Cats

    「猫の乳腺腫瘍の80〜90%が悪性」。生後6か月までの避妊で91%、12か月までで86%リスクが低下し、2歳以降の避妊では利益なし。高齢・純血種が多い。腫瘍径2cm未満・2〜3cm・3cm超で生存期間中央値がそれぞれ3年超・約2年・約6か月。外因性プロゲスチンの投与歴も発生に関与

    出典サイト

  • 査読論文確認日 2026-08-06

    Egenvall A ほか, 2005, コホート研究(保険データベース), P…

    スウェーデンの8万頭超のメス犬。乳腺腫瘍の発生率は犬種で幅があり、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの319頭/1万犬年が最高、ラフコートのコリーの5頭/1万犬年が最低。6歳・8歳・10歳の時点でそれぞれ1%・6%・13%が乳腺腫瘍の請求を経験

    PubMed (PMID 15899300)DOI 10.1016/j.prevetmed.2005.01.014

  • 査読論文確認日 2026-08-06

    Jitpean S ほか, 2012, コホート研究(保険データベース), Re…

    10歳までに乳腺腫瘍13%が発症、診断時平均8.0歳(SD±1.6)。子宮蓄膿症と乳腺腫瘍のいずれか/両方の発症割合上位はレオンベルガー73%・アイリッシュ・ウルフハウンド69%・バーニーズ・マウンテン・ドッグ69%・グレート・デーン68%

    PubMed (PMID 23279535)DOI 10.1111/rda.12103

  • 査読論文確認日 2026-08-06

    避妊が乳腺腫瘍リスクを下げるというエビデンス、および避妊年齢が影響するというエビデンスは弱いと判断され、確固たる推奨の根拠にはならない

    犬において「避妊が乳腺腫瘍リスクを下げるというエビデンス、および避妊年齢が影響するというエビデンスは弱いと判断され、確固たる推奨の根拠にはならない」と結論。犬での避妊の予防効果を断定しないための根拠として引用

    PubMed (PMID 22647210)DOI 10.1111/j.1748-5827.2011.01220.x

  • 査読論文確認日 2026-08-06

    Hayes HM Jr, Milne KL, Mandell CP, 1981,…

    猫132頭の乳腺腫瘍調査。悪性:良性=9:1。シャムは全品種合計と比べ乳腺癌の発症リスクが2倍(P<0.01)で、診断時年齢が他品種より若い傾向

    PubMed (PMID 7257136)DOI 10.1136/vr.108.22.476

このページは受診の判断を支える一般情報であり、診断や個別の助言ではありません。 症状や食事の方針は、かかりつけの獣医師の診察に基づいて決めてください。