皮脂腺炎
Sebaceous Adenitis 対象: 犬 分類: 皮膚 最終更新: 2026-07-11
食事との関係
特になし(皮脂腺の破壊が主病態で、食事が直接の原因・治療対象となる疾患ではない)。ただし栄養性皮膚症や[[zinc-responsive-dermatosis|亜鉛反応性皮膚症]]など見た目が似る疾患との鑑別のため、食事内容が確認されることがある
家で気づけるサイン
- 左右対称に近い脱毛(耳介・頭・顔・背中・尾に出やすい)
- 銀白色〜灰色のフケが毛にこびりつく(毛をまとめる“毛包円柱”)
- 被毛が乾いてパサつく・切れやすい、巻き毛が直毛化する
- 毛色が薄くなる/濃くなるなど質感が変わる
- 進行や二次感染でかゆみ・においが出ることがある
受診の目安
早めに受診(緊急性は低いが、脱毛やフケが続く・広がる、二次感染でかゆみやにおいが出た場合は受診し確定診断を。市販薬で様子見を続けない)
年齢の傾向
若齢〜中年齢の成犬で顕在化しやすい(スウェーデンの後ろ向き研究では診断時の平均約4.8歳・中央値5歳。高齢で見つかることもある)
なりやすいとされる犬種・猫種
- スタンダード・プードル(遺伝性)
- 秋田犬(家系性)
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル(家系性)
- ハバニーズ(家系性)
- ビズラ(家系性)
- ラサ・アプソ(疫学的)
- サモエド(疫学的)
- チャウ・チャウ(疫学的)
この病気に触れている図鑑のページ
3件の犬種・猫種のページが、気をつけたい病気としてこの病気を挙げています。 かかりやすさは個体差が大きく、ここに名前があることが「必ずなる」という意味ではありません。
詳しい解説
皮脂腺炎(Sebaceous Adenitis)
皮脂を分泌する皮脂腺が免疫介在性の炎症で破壊され、皮膚の角化(ターンオーバー)が乱れる慢性の皮膚病。原因は完全には解明されていないが、特定の犬種に強い好発傾向があることから遺伝的関与が示唆される(MSD)。犬でみられ、猫では非常にまれとされる。命に関わる病気ではないが、進行すると脱毛やフケが広がり、二次感染を起こすことがある。
「フケが多い」「毛づやが悪い」として見過ごされやすいが、毛にこびりつくフケ(毛包円柱)と左右対称に近い脱毛が慢性的に続く場合は、この病気が隠れていることがある。
好発品種(根拠の別)
MSD Veterinary Manual は好発品種として、秋田犬、ハバニーズ、ラサ・アプソ、サモエド、スプリンガー・スパニエル、スタンダード・プードル、ビズラを挙げる。うちスタンダード・プードルは遺伝性、秋田犬・ビズラ・スプリンガー・スパニエル・ハバニーズは家系性(遺伝的素因の疑い)と記載される。スウェーデンの104例の後ろ向き研究(Tevell EH ら 2008, PMID 18501018)でも、秋田犬・スタンダード・プードル・ラサ・アプソ・チャウ・チャウ・イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの過剰発生が確認されている。確立した遺伝子検査があるわけではなく、裏付けの取れない品種名は挙げていない。
飼い主が気づける徴候
- 耳介・頭・顔・背中・尾を中心に、左右対称に近い脱毛が出る
- 銀白色〜灰色のフケが毛にこびりつく(毛をまとめる“毛包円柱”が特徴)
- 被毛が乾いてパサつき、切れやすくなる。巻き毛が直毛化することがある
- 毛色が薄くなる/濃くなるなど、被毛の質感が変わる
- 進行したり二次的な細菌感染を起こすと、かゆみやにおいが出ることがある
受診目安・予防
緊急性は低い病気だが、フケや脱毛が続く・広がる、あるいはかゆみ・においなど二次感染を思わせる変化が出たら早めに受診する。似た見た目の皮膚症が複数あり、確定診断には皮膚科での皮膚生検が必要になるため、市販のシャンプーや保湿剤だけで様子を見続けない。好発品種は被毛・皮膚を定期的にチェックしておくと早期発見につながる。スタンダード・プードルなどでは無症状の保因が知られており、繁殖を考える場合は発症犬やその家系に留意する。具体的な治療内容は獣医師の診察に委ねる(本項では扱わない)。
費用の目安
皮脂腺炎にかかるお金は、症状の重さ・通う回数・住んでいる地域・その病院の料金設定で変わります。 ここに出すのは見積もりではなく、公表されている調査から拾った幅です。 自分の家の場合にいくらになるかは、かかりつけの病院で聞くのが確実です。
動物病院の料金表から(項目ごと)
| 項目 | 金額 | この検査・処置を行っていない病院 | もとの表 |
|---|---|---|---|
| 皮膚生検犬猫共通 | 6,250円 | 15.5% | p.67(PDF p.72) |
「この検査・処置を行っていない病院」の欄は、そう答えた病院の割合です。数字が大きい項目は、 かかりつけでは対応しておらず、紹介先の病院に移ることがあります。
出典: 日本獣医師会 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査 調査結果(令和5年9月)
いつのデータか: 2021年8月から10月にかけて動物病院に行ったアンケートで、そのときの料金設定です
読むときの注意: 回答した病院の自己申告です。獣医師の団体が料金の基準を決めることは法律で禁じられているため、全国共通の定価はありません。回答した病院の96.3%はふだんの診察を担う病院なので、紹介先の専門病院の料金とはずれることがあります
この数字の読み方
金額はどれも過去の調査をまとめたもので、いまの料金や、目の前の子にかかる額とは違います。 税込みか税別かも調査によって扱いが違います。
病院ごとに料金は自由に決められるため、同じ処置でも差が出ます。 気になるときは、受診の前に電話で聞いても構いません。金額を先に確認するのは失礼なことではありません。
獣医師に相談するための質問リスト
そのまま診察に持って行けるように整理しました。答えは診察でしか決まりません。
- いま与えているフードは、皮脂腺炎と診断された今の状態に合っていますか?
- 食事の内容や与え方について、いま変えたほうがよい点はありますか?(種類・量・回数・水分の取り方)
- おやつやトッピングは続けてよいですか?避けたほうがよいものはありますか?
- 家で見ておくべきサインはどれですか?(気づいた変化: 左右対称に近い脱毛(耳介・頭・顔・背中・尾に出やすい)/銀白色〜灰色のフケが毛にこびりつく(毛をまとめる“毛包円柱”) など)
- 次の受診や再検査はいつ頃がよいですか?その間に悪化を示すサインはどれですか?
- 今後の健診や定期検査で、確認しておくとよい項目はありますか?
- 食事以外に、家でできる工夫(環境・運動・体重)はありますか?
出典(2件)
Sebaceous Adenitis in Dogs and Cats
Sebaceous adenitis in Swedish dogs, a retrospective study of 104 cases
このページは受診の判断を支える一般情報であり、診断や個別の助言ではありません。 症状や食事の方針は、かかりつけの獣医師の診察に基づいて決めてください。