膵外分泌不全
Exocrine Pancreatic Insufficiency (EPI) 対象: 犬 分類: 消化器 最終更新: 2026-07-14
食事との関係
消化・吸収の管理が生活の柱になりうる疾患で、消化しやすい食事管理が関わる(具体的な食事・補充の方針は担当獣医師の指示による・本項では扱わない/)
家で気づけるサイン
- よく食べる(むしろ食欲旺盛)のに体重が減っていく・痩せる
- 便の量が非常に多い、ゆるい、色が薄い・灰色っぽい、脂っぽく悪臭がある(脂肪便)
- 1日に何度も排便する
- 被毛のツヤがなくなる・パサつく
- 食糞・異食が見られることがある
- お腹がゴロゴロ鳴る・ガスが増える・軟便が続く
受診の目安
当日〜早めに受診— よく食べるのに痩せる・脂っぽい多量の軟便が続くなら血液検査(cTLI等)でくわしく調べてもらう。子犬や、激しい下痢・脱水・ぐったりを伴う場合は当日受診
年齢の傾向
膵腺房萎縮(PAA)型はジャーマン・シェパードなどの若い成犬に多い。慢性膵炎に続発するEPIは中〜高齢でも起こりうる
なりやすいとされる犬種・猫種
詳しい解説
膵外分泌不全(Exocrine Pancreatic Insufficiency, EPI)
膵臓には血糖を調整するホルモン(インスリン等)を出す働きと、食べ物を分解する消化酵素を出す働き(外分泌)があります。膵外分泌不全は、この消化酵素を出す働きが足りなくなり、食べたものをうまく消化・吸収できなくなる病気です。栄養が体に取り込めないため、よく食べているのに痩せていくのが特徴的なサインになります。
もっとも多い原因は、酵素を作る膵臓の細胞(腺房)が萎縮してしまう**膵腺房萎縮(PAA)**で、ジャーマン・シェパード・ドッグの若い成犬に多く見られます(MSD)。膵外分泌の予備能は大きく、約9割以上の機能が失われて初めて症状が出るため、気づいたときには進行していることが少なくありません。
好発品種(根拠の別を明記)
- ジャーマン・シェパード・ドッグ — もっとも多い好発犬種。膵腺房萎縮(PAA)による若齢成犬のEPIが知られ、常染色体劣性の遺伝的背景が示唆されます(MSD/Batchelor 2007)。
- ラフ・コリー — ジャーマン・シェパードと並んでPAAによるEPIが多い犬種(遺伝性が示唆される・Batchelor 2007)。
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル・チャウ・チャウ・イングリッシュ・セター — EPIの症例で過剰に多く見られた犬種として報告(疫学的関連・Batchelor 2007)。
- このほか、慢性膵炎を繰り返した結果として膵臓が傷み、二次的にEPIへ至ることは犬種を問わず起こりえます。
飼い主が気づける徴候
- よく食べる(むしろ食欲旺盛)のに、体重が減っていく・痩せる
- 便の量が非常に多く、ゆるい、色が薄い・灰色っぽい、脂っぽく悪臭がある(脂肪便)
- 1日に何度も排便する
- 被毛のツヤがなくなる、パサつく
- 食糞・異食が見られることがある
- お腹がゴロゴロ鳴る、ガスが増える、軟便が続く
「たくさん食べるのに痩せる」「便がゆるく量が多い」の組み合わせが、この病気を疑う重要なポイントです。
受診目安・予防
- よく食べるのに痩せる・脂っぽい多量の軟便が続く場合は、早めに受診を。血液検査(cTLI=膵特異的トリプシン様免疫活性など)で調べられます。
- 子犬や、激しい下痢・脱水・ぐったりを伴う場合は当日受診を。
- 確立した予防法はありません。症状が出るのは、膵臓が消化酵素を出す働きの約9割が失われてからです。かかりやすい犬種では、早く気づいて受診してください。
- 診断後は消化・吸収を助ける食事管理が生活の柱の一つになりえます(方針は担当獣医師の診察に基づく・)。
- 本ページは受診判断の支援を目的とし、治療の選択は担当獣医師の診察に基づきます。
食事の考え方
消化する力そのものが足りない状態なので、食事は薬(消化酵素)との組み合わせで考えます。
この節は、獣医師が食事を選ぶときに何を見ているかを説明するものです。銘柄をすすめるものでも、自己判断で始めてよいという意味でもありません。 実際に何を、どれだけ与えるかは、その子の検査結果をもとに獣医師が決めます。
| 何を | なぜ見るか |
|---|---|
| 消化のよさ | 消化されやすい形の原材料が選ばれます |
| 脂肪 | 量を調整します。ただし体重を保つ必要もあるため、下げればよいわけではありません |
| 食物繊維 | 多すぎると消化酵素のはたらきを妨げることがあり、控えめの設計がとられることがあります |
| ビタミンB12 | 吸収されにくくなるため、不足していないかが見られます |
やせが続くかどうかが、食事と酵素の量が合っているかの手がかりになります。 体重を定期的に測って獣医師に伝えると、調整の材料になります。
獣医師に相談するための質問リスト
そのまま診察に持って行けるように整理しました。答えは診察でしか決まりません。
- いま与えているフードは、膵外分泌不全と診断された今の状態に合っていますか?
- 食事の内容や与え方について、いま変えたほうがよい点はありますか?(種類・量・回数・水分の取り方)
- おやつやトッピングは続けてよいですか?避けたほうがよいものはありますか?
- 家で見ておくべきサインはどれですか?(気づいた変化: よく食べる(むしろ食欲旺盛)のに体重が減っていく・痩せる/便の量が非常に多い、ゆるい、色が薄い・灰色っぽい、脂っぽく悪臭がある(脂肪便) など)
- 次の受診や再検査はいつ頃がよいですか?その間に悪化を示すサインはどれですか?
- 今後の健診や定期検査で、確認しておくとよい項目はありますか?
- 食事以外に、家でできる工夫(環境・運動・体重)はありますか?
出典(3件)
- 業界標準確認日 2026-07-14
Exocrine Pancreatic Insufficiency in Small Animals
膵腺房萎縮(PAA)はジャーマン・シェパード・ラフコリー・ユーラシアで最多の原因で、若い成犬のジャーマン・シェパードに多い。膵外分泌能の約9割以上が失われて初めて臨床徴候が出る。徴候は体重減少・多量でゆるく色の薄い便・多食
- 査読論文確認日 2026-07-14
Westermarck E, Wiberg M, 2003, 総説, Veter…
犬のEPIの最多原因は膵腺房萎縮で、ジャーマン・シェパードとラフコリーに好発。よく食べるのに痩せる・多量の脂肪便が典型徴候
- 査読論文確認日 2026-07-14
Batchelor DJ ほか, 2007, 症例対照/疫学研究, Journa…
ジャーマン・シェパードとラフコリーがPAAによるEPIに最も多く(常染色体劣性遺伝が示唆される)、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、チャウ・チャウ、イングリッシュ・セターも過剰代表だった
PubMed (PMID 17427378)DOI 10.1111/j.1939-1676.2007.tb02950.x
このページは受診の判断を支える一般情報であり、診断や個別の助言ではありません。 症状や食事の方針は、かかりつけの獣医師の診察に基づいて決めてください。