大動脈弁下狭窄症
Subaortic Stenosis (SAS) 対象: 犬 分類: 心疾患 最終更新: 2026-07-14
食事との関係
食事との直接の因果は確立していない。心不全に至った場合のナトリウム管理等は獣医師の指示による
家で気づけるサイン
- 多くは無症状で、健診の聴診で心雑音として見つかる
- 運動を嫌がる・すぐ疲れる(運動不耐)
- 運動後や興奮したときのふらつき・失神
- 呼吸が速い・苦しそう(心不全に至った場合)
- ※重症では突然死のリスクがある
受診の目安
健診で心雑音を指摘されたら、無症状でも循環器の評価(心エコー)を。失神・虚脱・呼吸困難は緊急(夜間救急)
年齢の傾向
先天性(生まれつき)。多くは子犬期の健診・ワクチン接種時の聴診で心雑音として気づかれる。軽症は無症状のまま経過することもある
なりやすいとされる犬種・猫種
詳しい解説
大動脈弁下狭窄症(Subaortic Stenosis, SAS)
大動脈弁下狭窄症は、心臓の左心室から大動脈へ血液が出ていく通り道(左室流出路)の、大動脈弁のすぐ下に線維性の組織ができて狭くなる先天性の心疾患です。狭い出口に血液を押し出すために左心室の壁が厚くなり(求心性肥大)、進行すると失神・不整脈・突然死・感染性心内膜炎などのリスクが高まります。犬の先天性心疾患のなかでも代表的なものの一つで、大型犬に多いとされます。
多くは生まれつきで、子犬期の健診やワクチン接種時に心雑音として気づかれます。軽症では生涯無症状のこともありますが、中〜重症では運動不耐や失神が現れ、突然死のリスクがあるため、心雑音を指摘されたら無症状でも循環器の評価が望まれます。
好発品種(根拠の別を明記)
- ニューファンドランド — 相対リスクが最も高い(Kienle 1994 でオッズ比88.1)。常染色体優性の家族性が知られます。PICALM 遺伝子の変異が関連すると報告されました(Stern 2014)が、別グループの後続研究で否定されており、遺伝子検査としての妥当性は確立していません。
- ロットワイラー・ボクサー・ゴールデン・レトリーバー — 相対リスクが有意に高いと報告(Kienle 1994・MSD 記載、疫学的関連)。
- ジャーマン・シェパード・ドッグ — MSD が好発犬種として記載。
- ブルマスティフ・ブーヴィエ・デ・フランドル・ドゴ・ド・ボルドー — 遺伝様式が記載された好発犬種(Ontiveros 2021)。
- なお SAS は好発犬種以外の大型犬にも起こりうる。
飼い主が気づける徴候
- とくに症状はなく、健診の聴診で心雑音を指摘されて分かることが多い
- 運動を嫌がる、すぐ疲れる(運動不耐)
- 運動後や興奮したときにふらつく・失神する
- 呼吸が速い・苦しそう(心不全に至った場合)
- ※軽症は無症状で、重症では突然死のリスクがある
受診目安・予防
- 健診で心雑音を指摘されたら、無症状でも循環器の評価(心エコー)を。 重症度の把握が対応の第一歩になります。
- 失神・虚脱・呼吸困難は緊急。夜間でも救急対応のできる病院へ。
- 好発犬種の子犬は、ワクチン接種などの機会に聴診で心雑音をチェックしておくと早期把握に役立ちます。
- 遺伝性が関わるため、学会は発症した子を繁殖に用いないことを推奨しています。ニューファンドランドでは常染色体優性の家族性が知られます(ただし前述のとおり遺伝子検査は広く確立していません)。
- 本ページは受診判断の支援を目的とし、診断・治療の選択は担当獣医師の診察に基づきます。
獣医師に相談するための質問リスト
そのまま診察に持って行けるように整理しました。答えは診察でしか決まりません。
- いま与えているフードは、大動脈弁下狭窄症と診断された今の状態に合っていますか?
- 食事の内容や与え方について、いま変えたほうがよい点はありますか?(種類・量・回数・水分の取り方)
- おやつやトッピングは続けてよいですか?避けたほうがよいものはありますか?
- 家で見ておくべきサインはどれですか?(気づいた変化: 多くは無症状で、健診の聴診で心雑音として見つかる/運動を嫌がる・すぐ疲れる(運動不耐) など)
- 次の受診や再検査はいつ頃がよいですか?その間に悪化を示すサインはどれですか?
- 今後の健診や定期検査で、確認しておくとよい項目はありますか?
- 食事以外に、家でできる工夫(環境・運動・体重)はありますか?
出典(4件)
- 業界標準確認日 2026-07-14
Stenosis of the Semilunar Valves in Animals
大動脈弁下の線維組織が左室流出路を狭める先天性心疾患。大型犬に多く、ボクサー・ゴールデンレトリーバー・ロットワイラー・ジャーマンシェパード・ニューファンドランドが好発。左室の求心性肥大・運動時失神・運動不耐・不整脈・突然死・感染性心内膜炎のリスクを記載
- 査読論文確認日 2026-07-14
Kienle RD, Thomas WP, Pion PD, 1994, 後ろ向…
195症例の自然経過解析。相対リスクはニューファンドランド(オッズ比88.1)、ロットワイラー(19.3)、ボクサー(8.6)、ゴールデンレトリーバー(5.5)で有意に高いと報告
- 査読論文確認日 2026-07-14
Ontiveros ES, Stern JA, 2021, 総説(review)…
遺伝学の総説。ブルマスティフ・ブーヴィエデフランドル・ドゴドボルドー・ゴールデンレトリーバー・ニューファンドランド・ロットワイラーで遺伝様式が記載。原因変異を同定した研究は乏しく、公表された変異はニューファンドランドの1件のみと指摘
- 査読論文確認日 2026-07-14
Stern JA ほか, 2014, 遺伝子関連研究(genetic assoc…
ニューファンドランドの家族性SASでPICALMの3塩基挿入が関連と報告(常染色体優性を想定)。ただし別グループの後続研究で関連は否定されており、遺伝子検査としての妥当性は確立していない
このページは受診の判断を支える一般情報であり、診断や個別の助言ではありません。 症状や食事の方針は、かかりつけの獣医師の診察に基づいて決めてください。