銅関連肝症(銅蓄積性肝障害)
Copper-Associated Hepatopathy 対象: 犬 分類: 肝 最終更新: 2026-07-14
食事との関係
食事中の銅・亜鉛のバランスが病態に関与するとされ、診断後は銅を調整した食事管理が管理の柱の一つになる(獣医師の指示による・)。健康な好発犬に対する自己判断での極端な銅制限は行わない
家で気づけるサイン
- 元気・食欲の低下、体重が減る
- 嘔吐、下痢
- 黄疸(白目・歯茎・皮膚が黄色い、尿が濃い)
- 水をよく飲む・尿が増える(多飲多尿)
- 進行するとお腹に水がたまる(腹囲が張る)、ふらつき・行動の変化(肝性脳症のサイン)
- ※初期(亜臨床期)は無症状で、健診の肝酵素上昇で気づかれることが多い
受診の目安
黄疸・繰り返す嘔吐・ぐったり・腹部膨満・ふらつきや異常行動(肝性脳症の疑い)は当日〜救急。食欲低下・体重減少・軽い元気消失が続く場合も早めに受診を
年齢の傾向
中年齢(おおむね2〜7歳前後)で顕在化することが多い。ベドリントンは若齢から銅が蓄積する。無症状の亜臨床期が長く、健診の肝酵素上昇で気づかれることがある
なりやすいとされる犬種・猫種
- ベドリントン・テリア(COMMD1〈旧MURR1〉遺伝子エクソン2欠失による常染色体劣性の銅蓄積症。遺伝子検査あり・van De Sluis 2002)
- ラブラドール・レトリーバー(遺伝的素因に食事中の銅が加わって発症するとされる。北米で増加・Fieten 2012)
- ドーベルマン(亜臨床性肝炎で肝銅濃度が高い。特にメスに多い・Mandigers 2004)
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(MSD/Merckが好発として記載)
- ダルメシアン(MSD/Merckが好発として記載)
- スカイ・テリア(「スカイ肝炎」として知られる銅関連肝症)
- キースホンド/[[welsh-corgi-pembroke|ウェルシュ・コーギー]]等(Merck記載)
詳しい解説
銅関連肝症(Copper-Associated Hepatopathy)
銅関連肝症は、肝臓に銅が過剰にたまって肝細胞を傷つけ、慢性の肝炎を起こす病気です。ヒトのウィルソン病に似た、肝臓からの銅の排泄がうまくいかない遺伝的な素因が関わるとされ、そこに食事中の銅の量・質が加わって発症・進行すると考えられています。ベドリントン・テリアでは COMMD1(旧 MURR1)遺伝子のエクソン2欠失という原因が同定されており、遺伝子検査があります。近年は市販フードの銅の生体利用性が高まった影響もあり、北米では犬の慢性肝疾患の主要な原因の一つとされます。
初期(亜臨床期)は無症状のことが多く、健診で肝酵素(ALTなど)の上昇として先に見つかることがあります。進行すると元気・食欲の低下、黄疸、腹水、肝性脳症(ふらつき・異常行動)などの重い状態に至ることがあります。
好発品種(根拠の別を明記)
- ベドリントン・テリア — COMMD1 遺伝子エクソン2欠失による常染色体劣性の銅蓄積症。遺伝子検査あり(van De Sluis 2002)。
- ラブラドール・レトリーバー — 遺伝的素因に食事中の銅が加わって発症するとされる(Fieten 2012)。
- ドーベルマン — 亜臨床性肝炎で肝銅濃度が高い(Mandigers 2004・特にメス)。
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア・ダルメシアン・スカイ・テリア(スカイ肝炎) — MSD/Merck が好発として記載(品種関連)。
- キースホンド・ウェルシュ・コーギー ほか — Merck が好発として記載。
- なお Merck は「どの犬種もこの毒性と無縁ではない」としており、好発犬種以外でも起こりうる。
飼い主が気づける徴候
- 元気・食欲がない、体重が徐々に減る
- 嘔吐、下痢
- 黄疸(白目・歯茎・皮膚が黄色っぽい、尿の色が濃い)
- 水をよく飲む・尿が増える(多飲多尿)
- お腹が張ってくる(腹水)、ふらつき・ぼんやり・行動の変化(肝性脳症のサイン)
- ※初期は無症状で、健診の肝酵素上昇で気づかれることが多い
受診目安・予防
- 黄疸・繰り返す嘔吐・ぐったり・腹部膨満・ふらつきや異常行動(肝性脳症の疑い)は当日〜救急。
- 食欲低下・体重減少・軽い元気消失が続く場合も、早めに受診を。
- 好発犬種は健診での肝酵素(ALT等)の定期チェックが早期把握に役立ちます。ベドリントンはCOMMD1遺伝子検査の相談を。
- 診断後は銅を調整した食事管理が管理の柱の一つになります(・方針は担当獣医師の診察に基づく)。
- 健康な好発犬に対して、飼い主の自己判断で極端に銅を制限することはしないでください。
- 本ページは受診判断の支援を目的とし、診断・食事管理の方針は担当獣医師の診察に基づきます。
食事の考え方
銅の量を抑えることが、この病気の食事管理の中心になります。
この節は、獣医師が食事を選ぶときに何を見ているかを説明するものです。銘柄をすすめるものでも、自己判断で始めてよいという意味でもありません。 実際に何を、どれだけ与えるかは、その子の検査結果をもとに獣医師が決めます。
| 何を | なぜ見るか |
|---|---|
| 銅 | 肝臓にたまることが問題なので、量を抑えた設計が中心になります |
| 亜鉛 | 銅の吸収を抑える方向にはたらくため、設計に組み込まれることがあります |
| たんぱく質 | 肝臓の状態に応じて量と質を調整します |
レバーなど内臓を多く含むおやつは銅が多いため、食事を切り替えても おやつがそのままだと管理になりません。鶏レバーのような素材を含む おやつやトッピングも含めて、全体で見ていきます。
肝臓の他の病気(門脈体循環シャントなど)とは設計が違うので、 どの病態かの診断が前提になります。
獣医師に相談するための質問リスト
そのまま診察に持って行けるように整理しました。答えは診察でしか決まりません。
- いま与えているフードは、銅関連肝症(銅蓄積性肝障害)と診断された今の状態に合っていますか?
- 食事の内容や与え方について、いま変えたほうがよい点はありますか?(種類・量・回数・水分の取り方)
- おやつやトッピングは続けてよいですか?避けたほうがよいものはありますか?
- 家で見ておくべきサインはどれですか?(気づいた変化: 元気・食欲の低下、体重が減る/嘔吐、下痢 など)
- 次の受診や再検査はいつ頃がよいですか?その間に悪化を示すサインはどれですか?
- 今後の健診や定期検査で、確認しておくとよい項目はありますか?
- 食事以外に、家でできる工夫(環境・運動・体重)はありますか?
出典(5件)
- 業界標準確認日 2026-07-14
Canine Chronic Hepatitis
銅関連肝症の好発としてベドリントンテリア・ラブラドールレトリーバー・ドーベルマン・ダルメシアン・ウエストハイランドホワイトテリア・ウェルシュコーギー・キースホンド等を記載。1997年ごろの食事性銅の生体利用性向上以降に増加し、北米で慢性壊死性炎症性肝疾患の最多原因。食欲不振・嘔吐・下痢・黄疸・多飲多尿・後に腹水を徴候に挙げる
- 査読論文確認日 2026-07-14
van De Sluis B ほか, 2002, ポジショナルクローニング(変異…
ベドリントンテリアの銅中毒症でCOMMD1(旧MURR1)遺伝子エクソン2の欠失を同定(常染色体劣性)
- 査読論文確認日 2026-07-14
Mandigers PJ ほか, 2004, 横断観察研究, Journal o…
ドーベルマンの亜臨床性肝炎群で肝銅濃度が有意に高く(419 vs 197 µg/g乾重量)、銅蓄積と肝細胞障害・肝炎の関連を示唆
- 査読論文確認日 2026-07-14
Fieten H ほか, 2012, 観察研究, Journal of Vete…
ラブラドールの銅関連肝炎は遺伝性で、食事中の銅・亜鉛の摂取量が肝内の銅・亜鉛濃度に関連
- 査読論文確認日 2026-07-14
Webster CRL ほか, 2019, ACVIMコンセンサスステートメント…
犬の慢性肝炎の診断の枠組み。銅関連が主要な原因群として位置づけられる
このページは受診の判断を支える一般情報であり、診断や個別の助言ではありません。 症状や食事の方針は、かかりつけの獣医師の診察に基づいて決めてください。