門脈体循環シャント
Portosystemic Shunt (PSS) 対象: 犬 分類: 肝 最終更新: 2026-07-11
食事との関係
肝臓・肝性脳症に配慮した食事管理が管理の柱の一つとなる
家で気づけるサイン
- 同腹子より体が小さい・なかなか大きくならない・やせ気味
- 食後にボーッとする・ふらつく・徘徊する・頭を壁に押し付ける(肝性脳症)
- よだれが多い・嘔吐・下痢・食欲にムラがある
- 水をよく飲み尿量が増える(多飲多尿)
- 重症ではけいれん・一時的な視覚障害・虚脱
受診の目安
早めに受診(発育不良・食後のふらつきや異常行動・慢性的な元気消失に気づいたら)。けいれん・意識障害・虚脱を伴う場合は緊急(夜間救急)
年齢の傾向
先天性。多くは1歳未満の若齢で発育不良や神経徴候として現れるが、症状が軽い場合は成犬になって顕在化することもある
なりやすいとされる犬種・猫種
- ヨークシャー・テリア(肝外シャント好発・遺伝性示唆)
- マルチーズ(肝外シャント好発・遺伝性示唆)
- ミニチュア・シュナウザー(肝外シャント好発・疫学的関連)
- プードル(肝外シャント好発・疫学的関連)
- ラブラドール・レトリバー(肝内シャント好発・疫学的関連)
- ゴールデン・レトリバー(肝内シャント好発・疫学的関連)
- アイリッシュ・ウルフハウンド(肝内シャント・遺伝性確立)
- ケアーン・テリア(肝外シャント・遺伝性示唆)
この病気に触れている図鑑のページ
4件の犬種・猫種のページが、気をつけたい病気としてこの病気を挙げています。 かかりやすさは個体差が大きく、ここに名前があることが「必ずなる」という意味ではありません。
詳しい解説
門脈体循環シャント(Portosystemic Shunt (PSS))
本来は腸から吸収した栄養やアンモニアなどを肝臓へ運んで処理させる血管「門脈」の血流が、肝臓を通らずに全身の循環(体循環)へ短絡(シャント)してしまう血管の異常。多くは生まれつき1本の異常血管が存在する先天性シャントで、肝臓で解毒されるはずの物質が全身に回るため、神経症状(肝性脳症)を中心にさまざまな不調が出る。シャントの位置により、肝臓の外にできる肝外シャント(小型犬に多い)と、肝臓の中にできる肝内シャント(大型犬に多い)に大別される(Vet Sci 2023, PMID 37235429)。
多くは1歳未満の若齢で発育不良や食後の異常として気づかれるが、症状が軽い場合は成犬になって初めて分かることもある。
好発品種(根拠の別)
肝外シャントは小型犬に多く、マルチーズ・ヨークシャー・テリア・プードル・ミニチュア・シュナウザー・ケアーン・テリアなどで好発が知られる。肝内シャントは大型・超大型犬に多く、アイリッシュ・ウルフハウンド・ラブラドール・レトリバー・ゴールデン・レトリバーなどで報告される(Vet Sci 2023, PMID 37235429)。アイリッシュ・ウルフハウンドでは遺伝性が確立しており、ヨークシャー・テリア・マルチーズ・ケアーン・テリアでも遺伝性が示唆される(一般的知見)。ヨークシャー・テリアは先天性の単一シャントで最も多く報告される品種とされる。裏付けの取れない品種名は挙げていない。
飼い主が気づける徴候
- 同腹子より体が小さい・なかなか大きくならない・やせ気味
- 食後にボーッとする、ふらつく、当てもなく歩き回る、頭を壁に押し付ける(肝性脳症の徴候)
- よだれが多い・嘔吐・下痢・食欲にムラがある
- 水をよく飲み、尿量が増える(多飲多尿)
- 重症ではけいれん、一時的に目が見えていない様子、ぐったりと虚脱する
食事のあとに神経症状が出やすいのが特徴の一つとされる。
受診目安・予防
発育不良や、食後のふらつき・ぼんやり・徘徊といった異常行動、慢性的な元気消失に気づいたら早めに受診する。けいれん・意識がもうろうとする・虚脱を伴う場合は肝性脳症の急性増悪の可能性があり、緊急(夜間救急)で受診する。診断は血液検査(食前後の胆汁酸やアンモニア)で疑い、超音波やCTなどの画像検査で確定するのが一般的。治療方針(内科管理か外科かを含む)は獣医師の診察に委ねる(本項では扱わない)。
食事の考え方
血液が肝臓を通らずに回ってしまうため、たんぱく質の扱いが食事の中心になります。
この節は、獣医師が食事を選ぶときに何を見ているかを説明するものです。銘柄をすすめるものでも、自己判断で始めてよいという意味でもありません。 実際に何を、どれだけ与えるかは、その子の検査結果をもとに獣医師が決めます。
| 何を | なぜ見るか |
|---|---|
| たんぱく質 | 量と質を調整します。減らしすぎると体を保てないため、兼ね合いで決まります |
| 銅 | 肝臓にたまりやすい場合があり、量が見られます |
| 亜鉛・抗酸化物 | 肝臓の状態に応じて設計に組み込まれます |
手術で対応する場合と、食事と薬で管理する場合があり、どちらの方針かで食事の設計も変わります。 自己判断で低たんぱくの食事に切り替えることはしないでください。
獣医師に相談するための質問リスト
そのまま診察に持って行けるように整理しました。答えは診察でしか決まりません。
- いま与えているフードは、門脈体循環シャントと診断された今の状態に合っていますか?
- 食事の内容や与え方について、いま変えたほうがよい点はありますか?(種類・量・回数・水分の取り方)
- おやつやトッピングは続けてよいですか?避けたほうがよいものはありますか?
- 家で見ておくべきサインはどれですか?(気づいた変化: 同腹子より体が小さい・なかなか大きくならない・やせ気味/食後にボーッとする・ふらつく・徘徊する・頭を壁に押し付ける(肝性脳症) など)
- 次の受診や再検査はいつ頃がよいですか?その間に悪化を示すサインはどれですか?
- 今後の健診や定期検査で、確認しておくとよい項目はありますか?
- 食事以外に、家でできる工夫(環境・運動・体重)はありますか?
出典(1件)
Congenital Portosystemic Shunts in Dogs and Cats: Treatment, Complications and Prognosis
PubMed (PMID 37235429)DOI 10.3390/vetsci10050346「Congenital出典サイト
このページは受診の判断を支える一般情報であり、診断や個別の助言ではありません。 症状や食事の方針は、かかりつけの獣医師の診察に基づいて決めてください。