肥満細胞腫
Mast Cell Tumor 対象: 犬・猫 分類: 腫瘍 最終更新: 2026-07-11
食事との関係
特になし(食事が直接の原因・治療対象となる疾患ではない)
家で気づけるサイン
- 皮膚のしこり(見た目が非常に多様で、良性のできもの・虫刺され・炎症に似ることがある)
- しこりの大きさが日によって変わる・急に赤く腫れる(脱顆粒による)
- しこりの表面が崩れる・潰瘍化する、触ると周囲に赤み・腫れが広がる(ダリエ徴候)
- 嘔吐・食欲不振・黒っぽい便(ヒスタミン放出による胃潰瘍・消化器症状)
- 猫では頭頸部の皮膚のしこり、または脾臓/消化管型で元気消失・嘔吐
受診の目安
早めに受診(皮膚のしこりが大きさを変える・崩れる・新しく増えた場合は当日〜早めに受診。自己判断でしこりを強くもむ・潰さない)
年齢の傾向
中年齢に多いが、どの年齢でも発症しうる(猫は皮膚型・内臓型で傾向が異なる)
なりやすいとされる犬種・猫種
- ボクサー(疫学的関連・比較的おとなしい性質の腫瘍が多い傾向)
- ボストン・テリア(疫学的関連)
- パグ(疫学的関連・多発しやすいが良性寄りの傾向)
- フレンチ・ブルドッグ(疫学的関連)
- ラブラドール・レトリーバー(疫学的関連)
- ゴールデン・レトリーバー(疫学的関連)
- ビーグル(疫学的関連)
- シャー・ペイ(疫学的関連・悪性度が高い傾向)
- ワイマラナー(疫学的関連)
- (猫)シャム(疫学的関連・若齢の皮膚型で報告)
この病気に触れている図鑑のページ
6件の犬種・猫種のページが、気をつけたい病気としてこの病気を挙げています。 かかりやすさは個体差が大きく、ここに名前があることが「必ずなる」という意味ではありません。
詳しい解説
肥満細胞腫(Mast Cell Tumor)
皮膚の免疫細胞である肥満細胞(マスト細胞)から発生する腫瘍で、犬で最も多い皮膚腫瘍とされる(MSD)。最大の特徴は「見た目が非常に多様」なこと。小さくよく動くしこりのこともあれば、赤く腫れて崩れた大きな塊のこともあり、良性のできものや虫刺され・皮膚炎と見分けがつきにくい。肥満細胞が持つヒスタミン等の物質が放出される(脱顆粒)と、しこりの大きさが日によって変わったり、急に赤く腫れたりする。放出された物質が全身に回ると、胃潰瘍による嘔吐や黒い便などの消化器症状を起こすことがある(MSD によれば最大1/4の犬に胃潰瘍を伴う)。
猫にも発生し、頭頸部にできる比較的おとなしい皮膚型と、脾臓や消化管にできる内臓型がある(ACVS)。犬・猫とも「皮膚のしこり」を軽視せず、早めに確認することが重要。
好発品種(根拠の別)
ACVS および疫学研究は、ボクサーとボストン・テリアで全体の約半数を占めると報告する。このほかパグ、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、フレンチ・ブルドッグ、ビーグル、シャー・ペイ、ワイマラナー等でも発生が多い(いずれも疫学的関連)。品種によって腫瘍の性質に傾向差があり、パグやボクサーは比較的おとなしい腫瘍が多い一方、シャー・ペイは悪性度が高い傾向が知られる。猫ではシャムで関連が報告される。いずれも確立した遺伝子検査に基づくものではなく、臨床・疫学的な好発傾向として知られるものである。
飼い主が気づける徴候
- 皮膚にしこりができる(大きさ・見た目はさまざまで、良性のできものと紛らわしい)
- しこりの大きさが日によって変わる、急に赤く腫れる
- しこりの表面が崩れる・潰瘍化する、触ると周囲に赤みや腫れが広がる(ダリエ徴候)
- 嘔吐、食欲不振、黒っぽい便(ヒスタミン放出による胃潰瘍のサイン)
- 猫では頭や首の皮膚のしこり、または元気消失・嘔吐(内臓型)
受診目安・予防
皮膚のしこりは、大きさが変わる・表面が崩れる・新しく増えた場合や、しこりに気づいたら早めに受診する(早めに受診)。肥満細胞腫はしこりを強くもむと脱顆粒を促してしまうことがあるため、自己判断で潰したり強く触ったりしない。見た目が多様で他のできものと区別がつかないため、診断は針を刺して細胞を調べる検査(細胞診)で行う。「小さいから」「動くから良性だろう」と様子見せず、確認のために受診することが早期発見につながる。具体的な治療内容は獣医師の診察に委ねる(本項では扱わない)。
費用の目安
肥満細胞腫にかかるお金は、症状の重さ・通う回数・住んでいる地域・その病院の料金設定で変わります。 ここに出すのは見積もりではなく、公表されている調査から拾った幅です。 自分の家の場合にいくらになるかは、かかりつけの病院で聞くのが確実です。
動物病院の料金表から(項目ごと)
| 項目 | 金額 | この検査・処置を行っていない病院 | もとの表 |
|---|---|---|---|
| 体表腫瘤切除犬猫共通 | 22,500円 | 2.7% | p.56(PDF p.61) |
| 細胞診(採取料)犬猫共通 | 750円 | 7.4% | p.67(PDF p.72) |
| 細胞診(検査料)犬猫共通 | 4,000円 | 8.8% | p.68(PDF p.73) |
| 組織診(切除・生検針)犬猫共通 | 8,750円 | 20.8% | p.68(PDF p.73) |
| 抗がん剤投与A犬猫共通 | 8,800円 | — | 別表2(小動物診療料金表) |
| 抗がん剤投与B犬猫共通 | 11,000円 | — | 別表2(小動物診療料金表) |
「この検査・処置を行っていない病院」の欄は、そう答えた病院の割合です。数字が大きい項目は、 かかりつけでは対応しておらず、紹介先の病院に移ることがあります。
出典: 日本獣医師会 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査 調査結果(令和5年9月)
いつのデータか: 2021年8月から10月にかけて動物病院に行ったアンケートで、そのときの料金設定です
読むときの注意: 回答した病院の自己申告です。獣医師の団体が料金の基準を決めることは法律で禁じられているため、全国共通の定価はありません。回答した病院の96.3%はふだんの診察を担う病院なので、紹介先の専門病院の料金とはずれることがあります
出典: 鳥取大学農学部附属動物医療センター諸料金規則 別表2(小動物診療料金表)
いつのデータか: 2026年4月1日から適用されている、規則に定められた料金です
読むときの注意: 1つの大学病院が公表している料金で、全国の相場ではありません。大学病院は紹介を受けて専門的な診療を行う施設なので、ふだんの動物病院とは料金の決め方も、診る症例の重さも違います。消費税込みの金額です
この数字の読み方
金額はどれも過去の調査をまとめたもので、いまの料金や、目の前の子にかかる額とは違います。 税込みか税別かも調査によって扱いが違います。
病院ごとに料金は自由に決められるため、同じ処置でも差が出ます。 気になるときは、受診の前に電話で聞いても構いません。金額を先に確認するのは失礼なことではありません。
獣医師に相談するための質問リスト
そのまま診察に持って行けるように整理しました。答えは診察でしか決まりません。
- いま与えているフードは、肥満細胞腫と診断された今の状態に合っていますか?
- 食事の内容や与え方について、いま変えたほうがよい点はありますか?(種類・量・回数・水分の取り方)
- おやつやトッピングは続けてよいですか?避けたほうがよいものはありますか?
- 家で見ておくべきサインはどれですか?(気づいた変化: 皮膚のしこり(見た目が非常に多様で、良性のできもの・虫刺され・炎症に似ることがある)/しこりの大きさが日によって変わる・急に赤く腫れる(脱顆粒による) など)
- 次の受診や再検査はいつ頃がよいですか?その間に悪化を示すサインはどれですか?
- 今後の健診や定期検査で、確認しておくとよい項目はありますか?
- 食事以外に、家でできる工夫(環境・運動・体重)はありますか?
出典(3件)
Tumors of the Skin in Dogs
Mast Cell Tumors
Occurrence and Distribution of Canine Cu…
Occurrence and Distribution of Canine Cutaneous Mast Cell Tumour Characteristics Among Predisposed Breeds(疫学研究・PMC6458547。好発品種ごとの発生・特徴の分布。2026-07-11確認)
このページは受診の判断を支える一般情報であり、診断や個別の助言ではありません。 症状や食事の方針は、かかりつけの獣医師の診察に基づいて決めてください。