椎間板ヘルニア
Intervertebral Disc Disease (IVDD) 対象: 犬 分類: 整形・神経 最終更新: 2026-07-11
食事との関係
特になし(体重管理・肥満回避という観点で適正給餌が有用)
家で気づけるサイン
- 背中や首を痛がる(抱くと鳴く・触られる/持ち上げられるのを嫌がる・背中を丸める)
- 動きたがらない・段差やジャンプ・抱っこを嫌がる・震える
- ふらつく・足を引きずる・爪先を擦る(ナックリング)
- 進行すると後ろ足が立たない(不全麻痺〜麻痺)・排尿排便が出せない/漏れる
受診の目安
緊急(夜間救急)=急に立てない・後肢が麻痺した・排尿できない・足先を触っても痛みを感じなさそうな場合は夜間でも緊急受診。首や背中を痛がって動けない・急にふらつく場合も当日受診
年齢の傾向
軟骨異栄養性の犬では椎間板の変性が生後数か月で始まり、Type I(脱出型)の発症は若い成犬(1〜2歳ごろ)から起こりうる。非軟骨異栄養性の犬では5歳以降に多い(線維輪の緩やかな変性型)
なりやすいとされる犬種・猫種
- ダックスフンド(軟骨異栄養性・好発/MSD・Cornell明示。ミニチュアで生涯発症する割合 約20%)
- フレンチ・ブルドッグ(軟骨異栄養性・好発/MSD・Cornell明示)
- ビーグル(軟骨異栄養性・好発/MSD・Cornell明示)
- ペキニーズ(軟骨異栄養性・好発/MSD・Cornell明示)
- シー・ズー(軟骨異栄養性・好発/MSD明示)
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク(軟骨異栄養性・好発/Cornell明示)
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル(軟骨異栄養性・好発/Cornell明示)
- プードル(ミニチュア)(軟骨異栄養性・好発/Cornell明示)
- ラサ・アプソ(軟骨異栄養性・好発/MSD明示)
この病気に触れている図鑑のページ
7件の犬種・猫種のページが、気をつけたい病気としてこの病気を挙げています。 かかりやすさは個体差が大きく、ここに名前があることが「必ずなる」という意味ではありません。
詳しい解説
椎間板ヘルニア(Intervertebral Disc Disease (IVDD))
背骨(椎骨)の間でクッションの役割をする椎間板が変性し、内容物が脊柱管側へ突出・脱出して脊髄や神経根を圧迫することで、痛みや麻痺を起こす病気。ダックスフンドをはじめとする軟骨異栄養性の犬種では、椎間板の変性が生後数か月という早い時期から始まり、若い成犬(1〜2歳ごろ)から急性かつ重い症状が出ることがある点が飼い主に伝えるべき重要ポイント(MSD)。非軟骨異栄養性の犬では5歳以降に緩やかな変性型として現れることが多い。
「急に抱っこを嫌がって鳴く」「段差を上らなくなった」「後ろ足がふらつく・引きずる」といったサインは背骨・脊髄のトラブルの可能性があり、進行が速いことがあるため軽視できない。
好発品種(根拠の別)
MSD/Merck Veterinary Manual が好発として明示する軟骨異栄養性の犬種は、ダックスフンド、フレンチ・ブルドッグ、ビーグル、シー・ズー、ラサ・アプソ、ペキニーズ。ミニチュア・ダックスフンドは生涯発症する割合が約20%と最も高いとされる。Cornell 大学(Riney Canine Health Center)はさらに、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、コッカー・スパニエル、ウェルシュ・コーギー(ペンブローク/カーディガン)、ミニチュア・プードルなどを挙げる。これらは軟骨異栄養性という体型・遺伝的背景(第12染色体の FGF4 レトロ遺伝子挿入)に基づく好発で、Cornell によれば関連する遺伝子検査も提供されている。裏付けの取れない個別品種は挙げていない。
飼い主が気づける徴候
- 背中や首を痛がる(抱くと鳴く・触られる/持ち上げられるのを嫌がる・背中を丸めて動かない)
- 動きたがらない・段差やジャンプ・抱っこを嫌がる・小刻みに震える
- ふらつく・足を引きずる・足の甲(爪先)を擦って歩く(ナックリング)
- 進行すると後ろ足が立たない(不全麻痺〜麻痺)・排尿排便が出せない、または漏れる
受診目安・予防
急に立てなくなった・後ろ足が麻痺した・排尿ができない・足先を触っても痛みを感じていなさそう、といった徴候は神経学的な緊急事態にあたるため、夜間でも緊急受診が望ましい(麻痺した犬では病変より尾側の深部痛覚の有無がその後の見通しを左右する最重要所見とされる/MSD)。首や背中を痛がって動けない、急にふらつくといった段階でも当日受診が望ましい。好発品種では、肥満を避け、急な段差の上り下りや過度なジャンプを控えることが背骨への負担軽減につながるとされる。診断は神経学的検査や画像診断で行い、具体的な対応は獣医師の診察に委ねる(本項では扱わない)。
費用の目安
椎間板ヘルニアにかかるお金は、症状の重さ・通う回数・住んでいる地域・その病院の料金設定で変わります。 ここに出すのは見積もりではなく、公表されている調査から拾った幅です。 自分の家の場合にいくらになるかは、かかりつけの病院で聞くのが確実です。
実際に支払われた金額から
| 対象 | 何の金額か | 金額 | 値の種類 | もとの表 |
|---|---|---|---|---|
| 犬全診療・ミニチュア・ダックスフンド | 1年間にかかった総額 | 120,503円 | 平均 | p.24 図表2-2-14 |
| 犬全診療・ミニチュア・ダックスフンド | 1年間にかかった総額 | 22,550円 | まんなかの値 | p.24 図表2-2-14 |
出典: アニコム家庭どうぶつ白書2025
いつのデータか: もとの資料に、いつからいつまでを数えたかの記載がありません
読むときの注意: 保険に入っている家庭の記録です。窓口でその場で精算できるぶん受診しやすく、入っていない家庭より金額が高めに出ることがあります。契約できる年齢に上限があるため、高齢になってから迎えた子は含まれにくくなっています
動物病院の料金表から(項目ごと)
| 項目 | 金額 | この検査・処置を行っていない病院 | もとの表 |
|---|---|---|---|
| 硬膜外麻酔犬猫共通 | 6,250円 | 78.8% | p.46(PDF p.51) |
| 椎間板ヘルニア手術(ベントラルスロット)犬猫共通 | 125,000円 | 80.9% | p.61(PDF p.66) |
| 椎間板ヘルニア手術(片側椎弓切除)犬猫共通 | 87,500円 | 69.5% | p.61(PDF p.66) |
| 椎間板ヘルニア手術(椎弓切除)犬猫共通 | 87,500円 | 77% | p.61(PDF p.66) |
| 椎間板ヘルニア手術(造窓術)犬猫共通 | 87,500円 | 75.3% | p.61(PDF p.66) |
| リハビリ(ウォータートレッドミル)犬猫共通 | 45,000円 | 83.9% | p.62(PDF p.67) |
| レーザー照射犬猫共通 | 2,500円 | 49.2% | p.62(PDF p.67) |
| エックス線検査(脊髄造影)犬猫共通 | 13,750円 | 73.2% | p.73(PDF p.78) |
| MRI検査犬猫共通回答16件と少なく、相場とは言えません | 45,000円 | 92.6% | p.75(PDF p.80) |
| MRI撮影料A(1臓器)犬猫共通 | 31,350円 | — | 別表2(小動物診療料金表) |
| MRI撮影料B(2臓器以上)犬猫共通 | 38,100円 | — | 別表2(小動物診療料金表) |
| MRI診断料犬猫共通 | 5,400円 | — | 別表2(小動物診療料金表) |
| 脊髄造影検査犬猫共通 | 3,300円 | — | 別表2(小動物診療料金表) |
「この検査・処置を行っていない病院」の欄は、そう答えた病院の割合です。数字が大きい項目は、 かかりつけでは対応しておらず、紹介先の病院に移ることがあります。
出典: 日本獣医師会 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査 調査結果(令和5年9月)
いつのデータか: 2021年8月から10月にかけて動物病院に行ったアンケートで、そのときの料金設定です
読むときの注意: 回答した病院の自己申告です。獣医師の団体が料金の基準を決めることは法律で禁じられているため、全国共通の定価はありません。回答した病院の96.3%はふだんの診察を担う病院なので、紹介先の専門病院の料金とはずれることがあります
出典: 鳥取大学農学部附属動物医療センター諸料金規則 別表2(小動物診療料金表)
いつのデータか: 2026年4月1日から適用されている、規則に定められた料金です
読むときの注意: 1つの大学病院が公表している料金で、全国の相場ではありません。大学病院は紹介を受けて専門的な診療を行う施設なので、ふだんの動物病院とは料金の決め方も、診る症例の重さも違います。消費税込みの金額です
この数字の読み方
金額はどれも過去の調査をまとめたもので、いまの料金や、目の前の子にかかる額とは違います。 税込みか税別かも調査によって扱いが違います。
病院ごとに料金は自由に決められるため、同じ処置でも差が出ます。 気になるときは、受診の前に電話で聞いても構いません。金額を先に確認するのは失礼なことではありません。
獣医師に相談するための質問リスト
そのまま診察に持って行けるように整理しました。答えは診察でしか決まりません。
- いま与えているフードは、椎間板ヘルニアと診断された今の状態に合っていますか?
- 食事の内容や与え方について、いま変えたほうがよい点はありますか?(種類・量・回数・水分の取り方)
- おやつやトッピングは続けてよいですか?避けたほうがよいものはありますか?
- 家で見ておくべきサインはどれですか?(気づいた変化: 背中や首を痛がる(抱くと鳴く・触られる/持ち上げられるのを嫌がる・背中を丸める)/動きたがらない・段差やジャンプ・抱っこを嫌がる・震える など)
- 次の受診や再検査はいつ頃がよいですか?その間に悪化を示すサインはどれですか?
- 今後の健診や定期検査で、確認しておくとよい項目はありますか?
- 食事以外に、家でできる工夫(環境・運動・体重)はありますか?
出典(2件)
Degenerative Diseases of the Spinal Column and Cord in Animals(Intervertebral Disc Disease)
Chondrodystrophy and intervertebral disc disease (CDDY/IVDD)
このページは受診の判断を支える一般情報であり、診断や個別の助言ではありません。 症状や食事の方針は、かかりつけの獣医師の診察に基づいて決めてください。