特発性てんかん
Idiopathic Epilepsy 対象: 犬・猫 分類: 神経 最終更新: 2026-07-11
食事との関係
特になし(食事が直接の原因となる疾患ではない。食事管理は獣医師の治療方針の範囲で判断され、受診に代わるものではない)
家で気づけるサイン
- 全身のけいれん発作(横に倒れ、手足を突っ張る・激しくバタつかせる)
- 意識がなくなる、呼びかけに反応しない
- よだれを大量に出す、失禁・脱糞する
- 発作の前後に落ち着きがなくなる・そわそわする
- 発作後にふらつく、一時的にぼんやりする・ものにぶつかる
- 顔や体の一部だけがピクつく、急に不自然な行動をとる(部分発作)
受診の目安
当日受診(初めての発作は必ず受診)。ただし発作が5分以上続く・短時間に繰り返す(群発)場合はてんかん重積として緊急(夜間救急)
年齢の傾向
若〜中年齢で初発することが多い(一般に生後6か月〜6歳、特に1〜5歳)
なりやすいとされる犬種・猫種
- ビーグル(遺伝的関連)
- ラブラドール・レトリーバー(遺伝的関連)
- ゴールデン・レトリーバー(遺伝的関連)
- シベリアン・ハスキー(遺伝的関連)
- キースホンド(遺伝的関連)
- アイリッシュ・セター(遺伝的関連)
- ベルジアン・タービュレン(遺伝子座同定)
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル(遺伝的関連)
- ジャーマン・シェパード・ドッグ(遺伝的関連)
この病気に触れている図鑑のページ
27件の犬種・猫種のページが、気をつけたい病気としてこの病気を挙げています。 かかりやすさは個体差が大きく、ここに名前があることが「必ずなる」という意味ではありません。
犬種
アイリッシュ・セター・アザワク・イタリアン・コルソ・ドッグ・イビザン・ハウンド・イングリッシュ・ポインター・ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル・ウェルシュ・テリア・オーストラリアン・シェパード・キースホンド・グラン・バセット・グリフォン・バンデーン・グレート・スイス・マウンテン・ドッグ・コーイケルホンディエ・ジャーマン・ショートヘアード・ポインター・ジャーマン・スピッツ・ハリア・ハンガリアン・ビズラ・ピレニアン・シープドッグ・フィールド・スパニエル・プチ・バセット・グリフォン・バンデーン・ブリタニー・スパニエル・ベルジアン・シェパード・ドッグ・ボーダー・テリア・ホワイト・スイス・シェパード・ドッグ・ムーディー・ラージ・ミュンスターレンダー・ラゴット・ロマニョーロ・ワイアー・フォックス・テリア
詳しい解説
特発性てんかん(Idiopathic Epilepsy)
脳に腫瘍や炎症などの明らかな構造的異常がないのに、繰り返し発作(けいれん)が起こる状態。「特発性」とは、はっきりした原因が特定できないという意味で、一部の品種では遺伝的な関与が知られる(MSD Vet Manual)。多くは若〜中年齢で初発し、生後6か月〜6歳、特に1〜5歳での発症が多いとされる(IVETF コンセンサス、De Risio 2015)。診断は、他の原因による発作を検査で一つずつ除外して初めてつくため(除外診断)、初めての発作でも必ず受診して原因を調べることが重要になる。
犬で品種ごとの遺伝的関与が比較的よく知られる一方、猫でも特発性てんかんは認められるが、犬ほど明確な好発品種は確立していない(好発品種欄は犬種を中心に記載)。
好発品種(根拠の別)
MSD Vet Manual が遺伝性の知られる品種として挙げるのは、ビーグル、キースホンド、アイリッシュ・セター、ベルジアン・タービュレン、シベリアン・ハスキー、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、ジャーマン・シェパード・ドッグ(いずれも遺伝的関連)。ベルジアン・シェパード系では原因遺伝子座(CFA37)が同定されているが、多くの品種では「家系内で遺伝的に伝わることが知られる」段階で、全品種に確立した遺伝子検査があるわけではない。裏付けの取れない品種名は挙げていない。
飼い主が気づける徴候
- 全身のけいれん発作(横に倒れ、手足を突っ張る・激しくバタつかせる)
- 意識がなくなり、呼びかけに反応しない
- よだれを大量に出す、失禁・脱糞する
- 発作の前後に落ち着きがなくなる、そわそわする
- 発作後にふらつく、一時的にぼんやりして物にぶつかる
- 顔や体の一部だけがピクつく、急に不自然な行動をとる(部分発作)
発作は数十秒〜数分でおさまることが多い。可能なら様子を動画で記録しておくと、受診時の診断に役立つ。
受診目安・予防
初めての発作は、たとえ短時間でおさまっても必ず受診し、原因を調べてもらう(当日受診)。特に、1回の発作が5分以上続く場合や、短時間に何度も発作を繰り返す(群発発作)場合は、てんかん重積という命に関わる状態のため、緊急(夜間救急)で受診する。診断は他の発作原因(脳腫瘍・脳炎・代謝疾患・中毒など)を検査で除外して行うため、血液検査や MRI などが必要になることがある。発作の日時・持続時間・頻度の記録と動画は、その後の経過把握にも役立つ。具体的な治療・投薬の内容は獣医師の診察に委ねる(本項では扱わない)。
費用の目安
特発性てんかんにかかるお金は、症状の重さ・通う回数・住んでいる地域・その病院の料金設定で変わります。 ここに出すのは見積もりではなく、公表されている調査から拾った幅です。 自分の家の場合にいくらになるかは、かかりつけの病院で聞くのが確実です。
実際に支払われた金額から
| 対象 | 何の金額か | 金額 | 値の種類 | もとの表 |
|---|---|---|---|---|
| 犬全診療・チワワ | 1年間にかかった総額 | 80,143円 | 平均 | p.21 図表2-2-5 |
| 犬全診療・チワワ | 1年間にかかった総額 | 56,071円 | まんなかの値 | p.21 図表2-2-5 |
出典: アニコム家庭どうぶつ白書2025
いつのデータか: もとの資料に、いつからいつまでを数えたかの記載がありません
読むときの注意: 保険に入っている家庭の記録です。窓口でその場で精算できるぶん受診しやすく、入っていない家庭より金額が高めに出ることがあります。契約できる年齢に上限があるため、高齢になってから迎えた子は含まれにくくなっています
動物病院の料金表から(項目ごと)
| 項目 | 金額 | この検査・処置を行っていない病院 | もとの表 |
|---|---|---|---|
| 脳脊髄液検査(採取料)犬猫共通 | 6,250円 | 80.2% | p.69(PDF p.74) |
| 脳脊髄液検査(検査料)犬猫共通 | 8,750円 | 79.1% | p.69(PDF p.74) |
| MRI検査犬猫共通回答16件と少なく、相場とは言えません | 45,000円 | 92.6% | p.75(PDF p.80) |
| MRI撮影料A(1臓器)犬猫共通 | 31,350円 | — | 別表2(小動物診療料金表) |
「この検査・処置を行っていない病院」の欄は、そう答えた病院の割合です。数字が大きい項目は、 かかりつけでは対応しておらず、紹介先の病院に移ることがあります。
出典: 日本獣医師会 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査 調査結果(令和5年9月)
いつのデータか: 2021年8月から10月にかけて動物病院に行ったアンケートで、そのときの料金設定です
読むときの注意: 回答した病院の自己申告です。獣医師の団体が料金の基準を決めることは法律で禁じられているため、全国共通の定価はありません。回答した病院の96.3%はふだんの診察を担う病院なので、紹介先の専門病院の料金とはずれることがあります
出典: 鳥取大学農学部附属動物医療センター諸料金規則 別表2(小動物診療料金表)
いつのデータか: 2026年4月1日から適用されている、規則に定められた料金です
読むときの注意: 1つの大学病院が公表している料金で、全国の相場ではありません。大学病院は紹介を受けて専門的な診療を行う施設なので、ふだんの動物病院とは料金の決め方も、診る症例の重さも違います。消費税込みの金額です
この数字の読み方
金額はどれも過去の調査をまとめたもので、いまの料金や、目の前の子にかかる額とは違います。 税込みか税別かも調査によって扱いが違います。
病院ごとに料金は自由に決められるため、同じ処置でも差が出ます。 気になるときは、受診の前に電話で聞いても構いません。金額を先に確認するのは失礼なことではありません。
獣医師に相談するための質問リスト
そのまま診察に持って行けるように整理しました。答えは診察でしか決まりません。
- いま与えているフードは、特発性てんかんと診断された今の状態に合っていますか?
- 食事の内容や与え方について、いま変えたほうがよい点はありますか?(種類・量・回数・水分の取り方)
- おやつやトッピングは続けてよいですか?避けたほうがよいものはありますか?
- 家で見ておくべきサインはどれですか?(気づいた変化: 全身のけいれん発作(横に倒れ、手足を突っ張る・激しくバタつかせる)/意識がなくなる、呼びかけに反応しない など)
- 次の受診や再検査はいつ頃がよいですか?その間に悪化を示すサインはどれですか?
- 今後の健診や定期検査で、確認しておくとよい項目はありますか?
- 食事以外に、家でできる工夫(環境・運動・体重)はありますか?
出典(2件)
Congenital and Inherited Cerebral Disorders in Small Animals(Idiopathic Epilepsy)
De Risio L, Bhatti S, Muñana K, et al.(2…
このページは受診の判断を支える一般情報であり、診断や個別の助言ではありません。 症状や食事の方針は、かかりつけの獣医師の診察に基づいて決めてください。